研究概要 |
紫外光電子分光(UPS), 準安定原子電子分光(MAES)およびX線回折によって, 有機-有機ヘテロ接合系の界面電子準位接続の分子集合構造依存性と電子状態への影響について研究した。特にイオン化エネルギー, 仕事関数, ホール注入障壁などの準位接続に関する分子配列構造依存性についての知見を得た。前年度の研究を発展させ, 特にSiO2上に多結晶DIP薄膜を作製し、その上にC_60膜を成長することによって、下層のDIP薄膜によるテンプレート効果によって、(111)配向した良質のC_60多結晶膜が成長できることを突き止めた。特にC60膜のイオン化エネルギー, 仕事関数, ホール注入障壁などの界面エネルギー準位接続に関する電子状態の膜構造依存性について精密な知見を得た。また、C60薄膜の結晶化度と(111)配高度が低下するとバンドギャップ状態の電子密度が増加し、バンドギャップ中でのフェルミ準位の位置が系統的に変化することを突き止めた。加えて、C_60薄膜中の電荷トラップ密度が、DIPテンプレート膜の利用によって大幅に低下することを超高感度UPSにより定量的に測定することに成功し、膜構造と電荷トラップ(バンドギャップ中の電子準位密度、エネルギー分布)との直接的な相関性を証明した。 この結果を利用して(111)配向C_60/DIP/SiO_2を用いてC_60トランジスタ(n型)を作製した結果、DIPテンプレートを用いないC_60トランジスタと比べて電子移動度が15倍、さらに40倍の動作安定性を実現することに成功した。以上、基礎的観点の当初目的を達成し、さらにその結果を実デバイスに適用して、その有効性も確認できた。
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