研究課題
実験系のセットアップ等から始め、K.pneumoniaのリン酸化プロテオーム解析予備実験を行い、70-80種のリン酸化ペプチドを同定した。次にバクテリアリン酸化プロテオーム解析のための試料前処理プロトコールを確立することを検討した。モデルバクテリアとして大腸菌を選び、種々の検討を行ったところ、哺乳動物用プロトコールで用いているタンパク質抽出法によって抽出される画分にリン酸化ペプチド濃縮を妨害する成分が大量に含まれることが判明した。この問題を解決すべく、様々な抽出法を検討し、最終的には液-液抽出法をベースにした新規の方法を確立した。自家製のリン酸化ペプチド濃縮カラムのサイズ、試料負荷量等のパラメータを更に検討し、プロトコールを最適化したところ、100μgの試料負荷量をもつ従来法とほぼ同等の性能を保ちながら、更に負荷量を5-10倍に増やすことに成功した。現在までに500-1000μgの細胞抽出タンパク試料から、計998種のユニークなリン酸化ペプチド(318種のタンパク質由来)を4186種の非リン酸化ペプチドとともに同定した。既報では計20mgの試料から107種のユニークリン酸化ペプチド(79種のタンパク質由来)が報告されているのみであるので、大きな改善がみられていることになる。現在得られている大腸菌リン酸化プロテオームの結果に対し、パスウェイ濃縮解析を行ったところ、Ribosome, Glycolysis, TCA cycle等のパスウェイの顕著な濃縮が認められた(p<0.0001)。更に還元的ジメチル反応を用いた安定同位体タグの導入に基づく定量系の確立を行った。
2: おおむね順調に進展している
バクテリアリン酸化プロテオーム解析のためのリン酸化ペプチド濃縮法の確立が順調に進行しており、当初からの目標であった大腸菌試料から500-1000リン酸化ベプチドを一度に同定できる技術の開発に目途がたったため。
バクテリアリン酸化プロテオーム解析用プロトコールを確立し、K.pneumoniaeの病原性に関わる分子基盤を明らかにするとともに、他のバクテリアについてもリン酸化プロテオーム解析を行い、バクテリアリン酸化プロテオームの全容を明らかにする。
すべて 2012
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J. Proteome Res.
巻: 11 ページ: 5362-75
DOI:10.1021/pr300582p