研究概要 |
前年度に確立したバクテリア試料用リン酸化ペプチド濃縮法を用いて大腸菌試料に対し適用したところ、現在までに393種のリン酸化タンパク質、1229種のリン酸化サイトを同定することに成功した。既知のリン酸化情報と比較すると、我々の結果は約10倍のリン酸化プロテオームをカバーしていることになる。セリン・スレオニン・チロシンの比は62.9/24/6.8であり、これは既知のものとほぼ同様であった。他のバクテリアと同様、大腸菌においてもリン酸化は多様な細胞機能(例えば中心炭素代謝系や他の恒常的プロセスに関わっており、その局在も細胞質から細胞膜まで偏りなくあらゆるものを含んでいた。さらに、ゲノムに約7%含まれる必須遺伝子の30%がリン酸化されていた。これらの結果は真核生物と同様にバクテリアでもタンパク質リン酸化は、重要な役割を果たしていることを示唆している。興味深いことにセリン、スレオニンリン酸化がphosphotransferase (PTS)やtwo-component systemなどの今までHis, Cys, Aspのリン酸化が関与しているとされていたシステムでも見出された。これらのリン酸化は、様々な環境条件に対処するために、真核生物のような別個のタンパク質リン酸化システムと協同している可能性も考えられる。大腸菌以外のバクテリアとしてグラム陽性菌であるB. subtilisとグラム陰性菌であるK. pneumoniaeに対して本法を適用した。B. subtilisからは443リン酸化ペプチド(175リン酸化タンパク質)、246リン酸化サイトが、K. pneumoniae試料からは673リン酸化ペプチド(286リン酸化タンパク質)、379リン酸化サイトが同定された。
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