代表者らの先行研究により、ムラサキイネは紫外線B(UV-B)に特異的なアントシアニン蓄積反応を示すことが明らかにされた。また、この反応を指標にムラサキイネからUV-B反応の突然変異体を分離し、UV-B特異的なシグナル伝達機構の存在を遺伝的に示すことができた。本研究は、このUV-B特異的な光反応のシグナル伝達機構を明らかにする目的で計画された。昨年度までの研究により、ニホンバレなどのジャポニカイネの幼葉鞘はUV-B特異的な(青色光では起こらない)成長抑制反応を示すことを明らかにし、更にジャポニカイネで観測されたこの反応はインディカイネでは起こらない(あるいは顕著に低下している)ことを見出した。このジャポニカイネとインディカイネの違いに着目して染色体断片置換系統を用いたQTL解析を行い、ジャポニカイネとインディカイネのUV-B反応性の違いの原因になる遺伝子は染色体1と12に座位することを示す結果を得た。本年度は、マイクロアレイを用いてUV-B照射により発現制御を受ける遺伝子の解析を進め、UV-Bで敏速かつ顕著に制御される遺伝子(ほとんどは未解析遺伝子)を特定した。さらに、それらの遺伝子のreal-time PCR解析により、UV-Bに特異的なもの(青色光の影響を受けないもの)を選抜した。これらの結果から、イネにはUV-Bシグナル伝達により特異的な発現制御を受ける新規遺伝子が存在することが示された。
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