研究課題/領域番号 |
12F02082
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
筒井 和義 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授
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研究分担者 |
SON YouLee 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 外国人特別研究員
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キーワード | 生殖 / 脳ホルモン / GnIH / 発現制御機構 / 時計遺伝子 / メラトニン / GnIHニューロン細胞 |
研究概要 |
本研究は、動物の生殖を制御する重要な新規脳ホルモンであるGnIH(gonadotropin-inhibitory hormone)に着目して「時計遺伝子とメラトニンによるGnIH遺伝子の発現制御機構」を目的として研究を実施し、本年度には以下の主なる成果を得た。 1)時計遺伝子によるGnIH発現の制御機構 時計遺伝子の一つであるCry1/2の欠損マウス(Cry-nullマウス)におけるGnIHの発現リズムの日内変動を解析した結果、Cry-nullマウスでのGnIHの発現が正常マウスと比べて昼の時間帯に著しく増加することを明らかにした。その詳しい制御機構を分子レベルで調べるため、ラット視床下部由来のGnIHニューロン細胞株(E23)を入手し培養細胞系を立ち上げた。GnIHニューロン細胞(E23)にはCry1/2を含む様々な時計遺伝子(Clock, Bmall, Per1/2)が発現していることと、GnIH遺伝子上流に時計遺伝子の作用部位であるE-box配列が複数存在することを明らかにした。E-box配列の機能を明らかにするため、GnIH遺伝子上流の2kbを含むレポーター遺伝子を作製し、GnIHのプロモーターアッセイ系を立ち上げ現在解析中である。さらに、体内時計の働きを制御する視交叉上核(SCN)から分泌される主要ペプチドである血管作動性腸管ペプチド(VIP)の受容体がGnIHニューロン細胞(E23)に発現していることも明らかにした。 2)メラトニンによるGnIH発現の制御機構 メラトニン合成能のあるC3Hマウスではメラトニン合成能のないC57BLマウスに比較してGnIHの発現が著しく高いことを明らかにした。さらに、GnIHニューロン細胞(E23)にはメラトニン受容体が存在することを明らかにし、GnIH発現を制御すると考えられるメラトニン受容体の詳しいシグナルカスケードの解析が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
事前の十分な準備と適切な研究計画により、当初の目的を超える研究の進展があった。特に、GnIHニューロン細胞には様々な時計遺伝子が発現していること、SCNから伝達されるVIPのシグナルを受け入れるVIPの受容体がGnIHニューロン細胞に存在することから、時計システムによるGnIH発現制御機構に重要な新知見が得られた。また、GnIH細胞培養系とGnIHプロモーターアッセイ系を立ち上げたことにより、動物個体レベルで確認されたGnIH発現変動についての詳しい制御機構を分子レベルで解析することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、今年度の研究によりセットアップしたGnIH細胞培養系とGnIHプロモーターアッセイ系を用い、分子レベルでの「時計遺伝子とメラトニンによるGnIH発現の制御機構」を継続して解析する。「時計遺伝子によるGnIH発現の制御機構」の項目では、GnIHプロモーター領域に存在するE-boxの機能解析、GnIHニューロン細胞における時計遺伝子の発現リズムの解析、VIP処理によるGnIHの発現変動及びGnIH細胞でのVIP受容体のシグナルシグナルカスケードを調べる。「メラトニンによるGnIH発現の制御機構」の項目では、メラトニン合成能のあるC3Hマウスにおいて、メラトニン合成器官である松果体を除去しGnIH発現変動を調べる。また、GnIH細胞培養系を用い、GnIH細胞でのメラトニン受容体のシグナルシグナルカスケードを解析しメラトニンによるGnIHの発現制御機構を明らかにする。
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