研究課題/領域番号 |
12F02089
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮崎 均 筑波大学, 生命環境系, 教授
|
研究分担者 |
ZRELLI Houda 筑波大学, 生命環境系, 外国人特別研究員
|
キーワード | 慢性腎不全 / カルノシン酸 / ローズマリー / インドキシル硫酸 |
研究概要 |
我が国の慢性腎不全症患者数は1300万人に及ぶ。本研究は、医薬からではなく食成分から慢性腎不全の改善及びそれに伴う血管障害の改善を目指す研究である。腎機能低下で血中濃度が上昇する尿毒症物質インドキシル硫酸(IS)が、細胞内で活性酸素種(ROS)を産生し、腎機能の増悪化のみならず、動脈硬化など種々の合併症を誘導することが明らかになってきた。本研究では、ローズマリーの抗酸化化合物カルノシン酸が、ISによる慢性腎不全の進行および血管壁細胞に対する悪影響を予防・改善できることを、in vivoとin vitro実験から実証すると共に、その作用機序を明らかにする。具体的に以下のことを行う。1)ISによる腎機能低下が、カルノシン酸により予防・改善できるかをin vivo実験で明らかにする。2)ISによる血管壁細胞やヒト尿細管細胞に対する悪影響を、カルノシン酸が予防・改善できるかを、培養細胞レベルで明らかにする。3)上記1)と2)の作用機序を、ダイオキシン受容体(AhR)の関与を焦点の一つとして明らかにする。これは、ISがAhRのアゴニストとして働く報告があり、当研究室でカルノシン酸がISによるAhR活性化を抑制する作用を見出したことによる。 平成24年度は、以下の成果を得た。 (1)ISがROS依存的に上皮成長因子受容体の発現を増加させることで、昇圧因子アンジオテンシンIIによる培養平滑筋細胞の遊走などを増強させ、動脈硬化の増悪因子として働くことを示した。(2)培養平滑筋細胞において、カルノシン酸が転写因子Nrf2を介して抗酸化酵素HO-1の発現を誘導し、増殖・遊走に関わる分子の活性化の抑制や、ROSの産生阻害を介してIS依存的な細胞の増殖・遊走を抑制することを示した。(3)尿細管由来細胞HK-2において、カルノシン酸はIS依存的なROS産生、腎線維化や炎症に関わる因子(TGFβ、α-SM actin、MCP-1)の発現を抑制することを示した。また、これらISの作用がAhRアンタゴニストで抑制されることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vivo実験を開始する直前に、体調不良を起こしたため実験を控えた。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞レベルの実験は概ね成果が得られている。慢性腎不全の典型的なモデルラットである6/5腎摘出ラットは、当研究室は2年ほど前に経験しているが、実験技術として難しいだけでなく、非常に症状が重篤になることから、アデニン投与によるマイルドなモデル系に変更して、本年度は行うことになっている。
|