研究課題/領域番号 |
12F02092
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
STRUSSMANN C.A. 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授
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研究分担者 |
HATTORI R.S. 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | ペヘレイ / 温度依存型性決定機構(TSD) / 遺伝型性決定機構(GSD) / 性決定遺伝子 / 性染色体 / 性転換 / コルチゾール |
研究概要 |
当該年度には実験対象としていた3種類のうち、ペヘレイを中心に研究を進めた。 ペヘレイOdontesthes bonarlensisは温度依存型性決定機構(TSD)の特徴を持ち、稚魚が性決定時期に経験した水温により性比が変動する。本種では雌雄の性比が安定して1:1となるような温度域が存在しないことから、性染色体の組み合わせにより性が決定する遺伝型性決定機構(GSD)は存在しないのではないかと考えられてきた。しかし近年、近縁種であるパタゴニアペヘレイのY-染色体上に雄性決定遺伝子amhyが発見され、GSDが存在することが明らかになった。そこで本研究では先ず、ペヘレイにおけるamhy遺伝子の存在を検証し、amhaとともに性分化過程における役割を調べた。 本研究で検証した全ての親個体はamha遺伝子を保持していた。一方、amhy遺伝子は約50%の個体で保持しており、その殆どが雄であった。発現解析ではamhy mRNAは孵化直後から全てのamhy^<+/->個体で安定して発現していたのに対し、amha mRNAは全てのavahy^<+/->個体および一部のamhy^<-/->個体で発現が確認された。孵化後10週目のamhy^<-/->個体ではamh mRNAの局在をしらべた結果、発現していた個体の生殖腺では全て輸精管構造が認められ、雄へと分化開始していた。一方、発現が検出されなかった個体の生殖腺は卵巣に分化していた。以上、本研究の結果から、ペヘレイにおいてもamhyが存在し、雄性決定機構に重要な役割を果たすことが示唆された。そのため、GSDおよびTSDの特徴を併せ持つことが示唆された。 今後は水温がどのようにamhy遺伝子の発現制御に注目し、ストレス軸を含むTSDとの関わりを調べる。また、amhyを用いて天然集団で性転換個体を特定し、本種を環境モニタリングの指標生物として用いることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ペヘレイの性分化は魚類で最も温度の影響を受けやすい種として注目されてきた。そのため、性染色体や性決定遺伝子が存在しないと思われていた。しかし、本研究で性決定遺伝子が存在し、雄化に重要な役割を果たしていることが明らかとなり、本種は温度依存型性決定機構と遺伝型性決定機構を併せ持つことを判明した。 また、ストレスホルモンを含んだ水温と性決定遺伝子の関連、また遺伝子の発現制御機構を解明しつつある。このような結果を元に、水温感受性に関する分子生物学的な基礎知見の構築に繋がることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続きペヘレイでの解析を進めるとともにパタゴニアペヘレイおよびメダカの温度感受性などを含む実験を行っていく予定である。
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