研究課題/領域番号 |
12F02093
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小田 達也 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授
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研究分担者 |
姜 澤東 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | アスコフィラン / 硫酸基レベル / 脱硫酸アスコフィラン / マクロファージ刺激活性 / 担癌マウスモデル / 経口投与 / 抗腫瘍活性 / 免疫機能上昇 |
研究概要 |
「研究目的」海藻由来多糖体の分子構造解析は極めて難しく、特に高分子多糖体の全体分子構造の提示は不可能に近い。アスコフィランはフコースとキシロースを主成分とし、ウロン酸とキシロース含量はフコイダンと比べ高い等の特徴を有する硫酸化多糖体である。フコイダンの構造(分子サイズ、硫酸基レベルなど)と生物活性に関しては、多くの報告があるが、アスコフィランに関してはほとんど無い。そこで、我々はアスコフィランの構造と生物活性相関の観点から、化学修飾法(ピリジン塩-ジメチルスルポキシド法)により、脱硫酸化アスコフィランを調製し、そのマクロファージ活性化作用について元のアスコフィランと比較し、硫酸基の生物活性発現に対する関与を検討した。さらに、担癌マウスモデルを用いて、数日間経口投与でアスコフィラム・ノドサムから粗多糖体及びアスコフィランの抗腫瘍活性及びそのメカニズムを検討した。 「研究結果」アスコフィランと脱硫酸アスコフィランの平均分子量及び化学組成解析の結果から、アスコフィランは脱硫酸反応においてほとんど分解されなかったことが分かったが、脱硫酸アスコフィランの硫酸基レベルは元アスコフィランと比べ、約21%の程度で減少した。さらに、脱硫酸後、アスコフィランのマクロファージRAW264.7細胞に対してNO、サイトカイン(TNF-α、G-CSF)、ROS産生の誘導活性は全て落ちたことが見出したから、硫酸基レベルはアスコフィランの免疫賦活活性に対して重要な役割を担っていることを推定された。一方、ddY担癌マウスモデルを用いて、数日間経口投与でアスコフィラム・ノドサムから粗多糖体及びアスコフィランの抗腫瘍活性及びそのメカニズムについて、経口投与した後、粗多糖体群及びコントロール群と比べ、アスコフィランは担癌マウス背中の固体腫瘍の生長に対して顕著的な抑制効果を見出した。粗多糖体の固体腫瘍に対する抑制作用も見られたが、顕著的に抑制効果を見られないことが分かった。担癌マウス血清におけるサイトカインの解析結果から、アスコフィランで経口投与した担癌マウス群は血清中のTNF-α、IL-12やINF-γレベルは粗多糖体群とコントロール群と比べ、顕著的に高いことで検出されたが、VEGFレベルはアスコフィラン群、粗多糖体群、コントロール群と比べ、ほとんど同じことが分かった。また、アスコフィランで経口投与した担癌マウス脾臓中NK細胞はマウスリンパ腫YAC-1細胞に対する細胞傷害活性が他の二つ担癌マウス群より高いことを見出したから、アスコフィランは担癌マウス脾臓中NK細胞活性を上昇したことが分かった。従って、15日間経口投与で、アスコフィランは担癌マウスの免疫機能を上昇することで抗腫瘍効果があることを示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究結果一部分について一部論文を作成して、<Carbohydrate Research>に投稿している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はこれまでの担癌マウスでの実験に加え、アスコフィラム・ノドサムから粗多糖体及びアスコフィランを担癌マウスにi.p.或はi.v.投与でその抗腫瘍効果とメカニズムを同様に解析する。その後、これらの結果によりアスコフィランの抗腫瘍効果に関する一部論文を作ると考えている。また、マクロファージ細胞膜表面にはtoll-like receptorやScavenging Receptorなどさまざまな受容体が存在し、フコイダンやLPSを認識し、細胞内シグナル伝達を誘導することが知られている。これまでの研究成果に基づいて、今後、アスコフィランを認識する受容体及び受容体とマクロファージ賦活活性に関与する信号伝達経路について解析すると考えている。
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