研究課題/領域番号 |
12F02094
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
奥 祐三郎 鳥取大学, 農学部, 教授
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研究分担者 |
DANG Zhisheng 鳥取大学, 農学部, 外国人特別研究員
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キーワード | エキノコックス / 細胞増殖 / MAPK / 遺伝子解析 / 次世代シーケンサ / 人獣共通寄生虫 |
研究概要 |
多包条虫Echinococcus multilocularisは日本を含め、広く北方圏に分布する人獣共通寄生虫で、人に感染すると肝臓で幼虫が無制限に増殖し、重篤な疾病を引き起こす。現在、多包虫症の治療として外科的切除のみが効果的な方法であるが、多包虫が増殖し、手遅れとなる症例もあることから、効果的な駆虫薬の開発が強く望まれている。 研究では、この幼虫の特異な増殖能力を探るべく、多包虫の細胞増殖・分化の分子基盤を解明し、その制御因子として有力な分子である受容体チロシンキナーゼおよび受容体セリン・スレオニンキナーゼとそれらのシグナル伝達に注目し、解析を行う事を目的とした。これに関連して、宿主の細胞増殖因子の寄生虫の増殖への影響についても調べる。本研究により多包条虫をはじめとした条虫類の生物学的特性を明らかにするのみならず、多包虫の宿主体内での無制限な増殖に必須となる因子を同定することで、それらをターゲットとした治療薬の開発へつながることが期待できる。 当該年度においては、我々が作成したエキノコックス幼虫cDNAライブラリーとSanger研究所のデータを利用し、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(Mitogen-activated Protein Kinase, MAPK)シグナル伝達経路の解析を行った。また、業者に委託した次世代シーケエンサの結果により、発現量トップ500から、MEK1、MNK1/2、G12等の遺伝子の発現量が16週目のサンプルに多かったということが明らかになった。つまり、これらの遺伝子が分化時期のエキノコックスの増殖、発育に非常に重要ということを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に業者に委託した次世代シーケンサのデーターの解析が遅れ、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ等の細胞増殖・分化の分子基盤を推定が遅れている。ただし、今年3月にSanger研究所の多包条虫に関する遺伝子データが公表され、今後この分子基盤を推定が加速する予想である。当初の計画では直接分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼの効果などを調べる予定であったが、実際にどのような増殖因子が含まれるのか不明で、取り敢えず予想される増殖因子の機能をin vitroで解析する予定であったが、今回の次世代シーケンサにより多包虫で増殖に機能している分子についてmRNAから推定されることから、このような解析方法に変更した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の業者に委託した次世代シーケンサのデーターおよびSanger研究所の多包条虫に関する遺伝子データを詳細に解析し、多包虫が賛成する分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ等の細胞増殖・分化の分子基盤を推定し、その後in vitroの実験でそれらの機能を確認する予定である。微少嚢胞や原頭節の培養法等については既に確立している。
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