研究課題
平成24年度から平成25年度の2カ年にわたり、ミャンマーのヤンゴン市とネピドー市の二都市でインフルエンザ様疾患患者に対して迅速診断キットにてスクリーニングを行い、陽性の場合、ウイルス解析のために咽頭ぬぐい液を採取した。検体から新潟大学でインフルエンザウイルスを分離培養し、ウイルス型別を行った。A型インフルエンザの場合は、リアルタイムPCR(サイクリングプローブ法)により、薬剤耐性株のスクリーニングを行った。すなわち、M2阻害剤に耐性となるM2遺伝子31位の変異と、NA阻害剤に耐性となるNA遺伝子275位の変異の有無を確認した。NA阻害剤耐性については、さらに2通りの方法で検査を行った。1) MUNANAを使った蛍光法により50%阻止濃度を算出して薬剤感受性試験を行い耐性の有無を判定した。2) NA遺伝子の遺伝子解析を行い、耐性に関与するアミノ酸変異を確認した。2年間で合計835名の患者が、インフルエンザ迅速キット陽性であり、培養用の検体を採取した。ミャンマーでは、インフルエンザの流行は6-9月にみられ、ピークは7-8月であった。平成24年度は、A/H1N1pdm09亜型を25株、B型を79株分離し、平成25年度はA/H3N2亜型を62株、A/H1N1pdm09亜型を1株分離した。リアルタイムPCRによるA型インフルエンザのスクリーニングの結果、2年間に検出されたA/H1N1pdm09亜型の26株、A/H3N2亜型の62株は全てM2遺伝子の31位に変異をもつアマンタジン耐性株であった。A/H1N1pdm09亜型については、NA阻害剤耐性となる275位の変異をもつ株は検出されなかった。NA阻害剤に対する薬剤感受性試験は、A/H1N1pdm09亜型の25株と、B型の21株について施行した。結果は、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、ラニナミビルの4剤に対して全ての株が感受性であり、耐性株の出現は認められなかった。同様に、NA遺伝子のシークエンス解析から、耐性化につながる遺伝子変異(H275Y、E119Vなど)は検出されなかった。熱帯亜熱帯で、インフルエンザの薬剤耐性調査を行った報告はほとんどないため、我々の調査は貴重である。今後さらに詳細な解析を進めて、論文発表を行い結果の周知をはかる。
(抄録なし)
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
Virus Research
巻: 179 ページ: 53-63
10.1016/j.virusres.2013.11.012.
Tohoku Journal of Experimental Medicine
巻: 232 ページ: 97-104
http://www.crnid.riken.jp/jgrid/center/Myanmar-niigata.html