研究課題/領域番号 |
12F02108
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
亘理 文夫 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 特任教授
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研究分担者 |
CHEN X. 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | カーボンナノチューブ / 抗癌治療 / 化学療法 / 多剤耐性 / 細胞膜透過性 / 蛋白質吸着 / P-糖蛋白質 / 抗癌剤 |
研究概要 |
[目的]代表的なナノマテリアルのカーボンナノチューブ(CNT)はナノレベルで生体反応を制御できる物質として医・歯・薬領域共通に応用が期待される。CNTのバイオ応用のターゲットは大きく組織再生と癌治療の二つであるが、癌治療への応用は本格的には手掛けられていない。本研究では化学療法による癌治療の問題点である多剤耐性発現による抗癌効果の低下を抑制するために、癌細胞(ヒト大腸癌細胞caco-2)にCNTを投与し、細胞膜に存在し細胞内から薬剤の透過ポンプ排出作用のあるP-糖蛋白質(PGP)発現に及ぼす影響を調べた。 [結果]まず蛋白質(アルブミンBSA)吸着によりCNTの分散・溶解性を改善し、細胞増殖、細胞活性には影響しないことを確認した。次にローダミン123を用いて細胞内からの排出速度を調べCNT投与量が高いほどPGP輸送機能は低下した。またPGP発現を調べると、転写レベルのRT-PCRによるmRNA、翻訳レベルのWestern blottingによるPGP全蛋白質量total protein、細胞膜レベルの蛍光免疫染色による発現観察のいずれにおいても、CNT投与量に依存して低下した。また癌病態の進展に影響を与える活性酸素の産生もCNTとともに増加し、フローサイトメトリーにより細胞膜脂質の酸化が検出された。SEM観察では細胞膜上に多数のCNTが認められ、TEM観察では細胞内へのCNTの取込が観察された。ヒト膠芽細胞腫、ラット星状細胞でも同様な結果が見られた。 [結論]本研究により、CNTのPGP輸送機能の抑制効果が明らかとなり、その原因として酸化ストレス、細胞膜脂質の損傷が示唆された。PGPが抑制されれば細胞からの薬剤流出が低減し、癌細胞内の抗癌剤濃度レベルが細胞死レベルまで上昇することが可能になり、多剤耐性を抑制し癌化学療法の効率的な応用にCNTが寄与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)研究結果1様々な手法を用いてカーボンナノチューブの多剤耐性抑制効果を確認する結果を得た。 (2)学会発表:国際学会を含む数件の学会発表を行った。 (3)論文:論文を作成中である。 (4)共同研究:関連したナノカーボンを用い、抗癌剤の選択投与を行うDDS(Drug Delivery System)に関する共同研究も新たに始めている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)指導体制=亘理文夫特任教授は定年退職のため、平成25年度以降、研究代表者は赤坂司准教授に変更になるが、引続き非常勤講師及び学術研究員として同教室及び北海道大学他研究科で教育・研究に従事するため、外国人特別研究員の指導体制は従来と全く変わりなく継続する。 (2)論文投稿:学術雑誌への投稿論文作成中で、今後とも共同研究の進展も含め、論文の作成・投稿を進めていく予定である。
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