研究課題
抗癌剤を長間使用すると多剤耐性が発現し、次第に抗癌剤の薬効が減衰する。抗癌剤の作用を保持し癌化学療法の治療効果を上げるには、この多剤耐性を抑制する必要がある。本研究では、代表的なナノマテリアルであるカーボンナノチューブ(CNT)の糖鎖・蛋白質吸着性、細胞膜透過性というユニークな特性に着目し、多剤耐性原因因子の吸着・制御による抗癌治療の高効率化を目的とした。今年度は、2種類のナノカーボン、(1)CNTと(2)ナノダイアモンド(ND)について抗癌薬剤への応用研究を行い、それぞれ新しい進展が得られた。(1)CNTの多剤耐性抑制効果 : 癌細胞から薬剤を細胞外へ早期に排出させ、抗癌剤の細胞内滞留時間を低減し薬効を減じ、多剤耐性の原因となる因子として細胞膜のポンピング作用を司る蛋白質P-グリコプロテイン(PGP)や多剤耐性関連蛋白質(MRP)がある。CNTを投与すると透過型電子顕微鏡(TEM)観察から細胞内取込が確認され、投与量とともに、m-RNA, PGP総蛋白量、免疫染色のいずれのレベルでもこれらの蛋白量の低下が認められた。これはCNTの抗癌剤の多剤耐性抑制効果のメカニズムの直接的な解明である。(2)NDのDDS応用のためのステルス性付与 : 現在、開発中のドラッグデリバリーシステム(DDS)においてはターゲット癌組織に至る前に、マクロファージ等の免疫細胞により異物と見なされ捕捉貧食されてれしまうという問題点がある。この問題をいかに回避するかというのは現時点における課題であるが、今回薬剤担体として用いたナノダイアモンドについて表面をポリグリセロール(PG)でコーティングすることにより、異物と認識されず貪食を回避できるステルス性を獲得することが示された。これはDDSの臨床応用にきわめて重要である。
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Adv Funct Mater.
巻: (印刷中)
10.1002/adfm.201304298.
Biomaterials
巻: 35(20) ページ: 5393-5406
10.1016/j.biomaterials.2014.03.041