研究実績の概要 |
来る水素エネルギー社会を支えるキーテクノロジーとして、高効率水素貯蔵技術の確立が求められている。これまで各種水素貯蔵材料が検討されてきたが、重量・体積当たりの水素密度が低いこと、リサイクル性、反応温度・速度、分離・回収技術等の問題がネックとなっている。最近、多孔質金属配位高分子材料による水素貯蔵が盛んに研究されているが、フレームワークと水素との相互作用が弱く、十分な水素吸蔵量を得るには低い吸蔵温度が必要である。そのために、水素との相互作用が強く、高密度水素を可逆的に吸蔵・放出できる水素貯蔵材料の開発が求められている。本研究では、ホウ素-炭素-窒素(BCN)系多孔質フレームワークを有望な水素貯蔵材料として取り上げ、高性能可逆的水素貯蔵技術の確立を目的としている。カーボンフレームワークへのN-ドープが水素貯蔵能に与える効果をより明らかにするために、窒素成分を多く含む金属配位高分子ZIF-8をテンプレートと前駆体として、フルフリルアルコールとNH4OHをそれぞれ第2の炭素源と窒素源として用いて、600, 800 と1000 °C でアルゴン雰囲気下で熱処理させることにより、高い表面積を有し、N-ドープされた多孔性炭素試料NC600, NC800 とNC1000を合成した。処理温度の上昇につれて、ドープしたN-成分の量が減少することが分かった。試料NC1000は 低いN 含有量(0.7 wt%) と高い比表面積 (3268 m2 g-1) を有し、最も高い水素吸蔵量(254 cm3/g (STP) , 77 K, 1 atm)を示す。試料NC600は最も低い比表面積(455 m2/g) と最も高いN 含有量(25.9 wt%) を有し、中程度の水素吸蔵量(106 cm3/g ) を示す。試料NC800 は中程度の比表面積 (1546 m2/g) と N 含有量(14.7 wt% N ) を有し、高い水素吸蔵量(199 cm3/g) を示す。これらの結果から、比表面積と窒素含有量はともに吸着能に大きく影響することが明らかになった。
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