研究課題
ヤムイモは西アフリカ地域において重要な主食作物であり、世界のヤムイモ生産量の約9割にあたる5000万トン/年がこの地域で栽培されている。品種改良によるヤムイモの生産性の向上には、ヤムイモ遺伝資源を効率的に維持・管理し、利用促進を図る必要がある。本研究課題では、ヤムイモ遺伝資源の効率的な利用に向けた基盤情報整備を目的とした遺伝的多様性解析を行っており、今年度の進捗状況を以下に報告する。課題1DNA多型解析によるヤムイモ遺伝資源の多様性解析本課題では、ヤムイモのうち西アフリカ地域において最も重要なホワイトギニアヤム(Dioscorea rotundata)を研究対象としている。本課題では、DNAマーカーの一種SSR(Simple Sequence Repeat)マーカーを用いて西アフリカのヤムイモ遺伝資源500系統のDNAレベルの多様性解析を行い、少数かつ多様な変異を持つ「多様性解析材料セット」の構築を目的としている。DNA多型解析には、植物体の乾燥葉からDNAを抽出し、ホワイトギニアヤムにおいて明確な多型を示す16セットのSSRマーカーによる解析を行った。得られたデータの多変量解析によりヤム遺伝資源の遺伝的構成や系統関係を調査した。課題2ヤムイモ遺伝資源の倍数性変異の解析ホワイトギニアヤムの種内には、倍数性変異があることが知られており、多様性を評価するうえで重要な形質のひとつである。本課題では、上述のホワイトギニアヤム系統の倍数性変異をフローサイトメーター(倍数性変異解析装置)を用いて解析した。まず、基準となる系統の根組織の顕微鏡観察により染色体数を決定し、その後フローサイトメトリーにより倍数性変異の解析を行った。DNA多型解析に用いた500系統のうち、473系統のフローサイトメトリーを行った。その結果、419系統(88.6%)は2倍体、54系統(11.4%)は3倍体であることが明らかになった。
1: 当初の計画以上に進展している
500系統のヤム遺伝資源のSSRマーカーによるDNA多型解析が順調に進み、多様性を包含する代表系統「多様性解析材料セット」の候補系統を選出することができ、今後の詳細な表現型および遺伝子型の変異解析研究の基盤が整った。また,これまで情報に乏しかった倍数性変異についても明らかにすることができた。
ヤム遺伝資源のDNA多型解析における欠損データの補完を行うとともに得られたデータの詳細解析を進め、論文化する。また、倍数性と表現形質およびDNA変異との関連について解析を進める。
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