研究課題/領域番号 |
12F02215
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 保 独立行政法人森林総合研究所, 森林植生研究領域, チーム長
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研究分担者 |
TRAN DoVan 独立行政法人森林総合研究所, 森林植生研究領域, 外国人特別研究員
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キーワード | 細根 / 分解率 / 生産量 / 照葉樹林 / 熱帯季節林 / ベトナム / 綾 |
研究概要 |
細根は森林生態系において養分や水分の吸収を担っているだけではなく、炭素の動態にも大きな役割を果たしている。一方でこれら重要性があるにもかかわらず、細根研究の多くは落葉広葉樹林や針葉樹林で行われている。本研究は、細根動態研究の言わば空白域でもある常緑広葉樹林を対象に、連続した試料採取を用いて細根の生産量を高精度に把握することを目的とする。 天然林における細根動態の測定には様々な測定手法が用いられているが、一般に細根の成長と枯死は同時に生じていると想定され、その測定は従来のコアサンプルを使用した手法では直接できず、したがって細根生産量の推定値は過小評価になることが現存量と枯死量のバランスを基にした考えから示されている。近年、このような過少推定の要因となっていた細根の分解率を細根の枯死と分解は一定の割合で発生すると仮定して求める新しい手法(continuous inflow estimate)が提案された。この新しい手法は、従来の現存量と枯死量の差から求める手法(decision matrix)よりも正確に細根量が求められる手法であると期待されているが、その適用事例は日本のヒノキ人工林とカナダの北方林とまだ限られている。本研究では上記の分解率を考慮した新しい手法を用いて細根量とその動態を常緑広葉樹林において高精度に把握する初めての試みである。 初年度である平成24年度は、対象とする試験地に細根動態測定のための測定器具の設定を実施した。具体的には、国内の常緑広葉樹林(宮崎県綾町)とベトナム北部の常緑広葉樹林2林分(成熟林と二次林)にイングロースコア、小型スキャナおよび分解速度測定のための試料を埋設した。ベトナムの2林分での比較からは、細根の生産量および枯死量は二次林の方が成熟林よりも高い値を示した。また、測定手法によるバラつきも認められ、コアサンプルを用いた値はイングロースコアを用いた値よりも高い計算値が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本とベトナムの試験地において、当初の計画通りに細根動態測定のための測定器具の設置が完了した。また、イングロースコアおよびコアサンプルによる試料回収も実施し、細根の生産量および枯死量の初期値が算出できた。以上のことから当初の計画に対して、おおむね順調に進展していると判定した。
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今後の研究の推進方策 |
二年目である平成25年度は、国内の常緑広葉樹林(宮崎県綾町)とベトナム北部の常緑広葉樹林にて前年度に設定したイングロースコアの回収と小型スキャナによる細根伸長量の測定を継続して実施する。特に国内常緑広葉樹林では、小型スキャナによる細根伸長量と枯死量を集中的にデータを収集し、加入および枯死速度を加味することによって細根生産量推定の精度向上を目指す。
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