研究実績の概要 |
ベトナム北部および宮崎県綾町の常緑広葉樹林において、深さ80cmまでの細根量を計測した結果、全体量の約70%が表層から20cmまでに集中していた。特にベトナム試験地では、82.4%と高く、腐食の浸透がより深い場所まで達していることが要因と考えられた。これら根の垂直分布から、表層21cmまでを対象とした定期的なコアサンプルで細根量の動態を解析しても妥当であると考えられた。細根の分解率には、季節性が認められた。すなわち、夏季および雨季の時期の分解率は、冬季および乾季のそれに比べて高い傾向を示す。このような差は、主に有機物の分解に寄与する微生物の活動に起因するものと考えられた。なお、細根のサイズによる分解率に差は認められなかった。細根の枯死量および生産量も、分解率同様に季節性が認められ、その傾向はベトナム試験地よりも綾試験地の方でより明確であった。これは主に日本の気候条件(気温と降水量)がベトナムよりも季節による格差があることや、種組成が異なることに起因すると考えられた。細根生産量に占める分解量の割合は、綾試験地で42.5%にあたる0.66 g/m2/日、ベトナム試験地で68.5%にあたる0.24 g/m2/日であった。今回の結果は、細根の生産量求める上で分解量を計上しないと大幅な過小推定になること示している。また、綾試験地において同一時期の落葉落枝量と細根生産量の関係を見たところ、サンプル数は少ないが両者には正の相関が認められた(r2=0.64, n=3)。このことから、落葉落枝量は、細根生産量を非間接的に推定するための良い指標となる可能性がある。 本研究では細根の成長量とその速度を把握するためにスキャナを土中に埋設し、時系列で取得した断面画像から、新規に伸長した部分や分解により消失した部分を把握することに成功しており、時系列のデータを集積することによって高精度に細根の伸長速度を推定できる可能性が示された。
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