研究課題/領域番号 |
12F02216
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
秋庭 正人 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域, 主任研究員
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研究分担者 |
TUAN Nguyen Vu 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域, 外国人特別研究員
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キーワード | Campylobacter jejuni / LOS / 自己凝集性 / 付着 / バイオフィルム |
研究概要 |
本研究の目的は表面糖鎖構造の変化がCampylobacterの付着と生残に及ぼす影響を解析することである。このため、C. jejuni NCTC11168及び81-176を親株とし、hlkdD、hldE、waaC、waaF、cjl136、cjl138、及びcjl165遺伝子を破壊したLOS変異株を昨年度までに作出した。このうち、hldDとhldEはヘプトースの生合成に関与する遺伝子で、その他は糖鎖へのヘプトース、グルコース、ガラクトース付加に関与する。今年度はこれら菌株の好気条件下(通常は微好気条件下で培養)における自己凝集性、ガラス表面への付着、バイオフィルム形成量を比較した。その結果、好気条件下においてはLOS変異がガラス表面への付着に影響し、さらに付着の程度はバイオフィルム形成能と相関することを明らかにした。 また、今年度はserudaminic acid (serAc)とserAcのアセトアミド型(serAm)の生合成に関与するserA及びserB遺伝子の破壊株を新たに作出した。serAとserBの破壊は鞭毛の糖鎖修飾を妨げることが知られている。これら菌株の性状を解析したところ、serA及びserB変異株は親株と比べて自己凝集性、ガラス表面への付着、バイオフィルム形成量が低下し、鞭毛グリカンの構造がこれら性状に影響することが示された。 さらに、今年度はセリン生合成に関与するserA、serB、serC遺伝子の不活化により、自己凝集性、ガラス表面への付着、及びバイオフィルム形成量が低下することを見出した。serA、serB、serC変異株はセリンを含まないMEM培地中では親株より増殖が低下したが、栄養が豊富なMHB培地やセリン加MEM培地では親株と同等の成績を示した。これらの成績はセリンがCamypylobacterの増殖、付着、バイオフィルム形成に必須だが、serA、serB、serCが不活化されても、セリン特異的トランスポーターSdaCが存在すれば、菌体外からセリンを取り込むことで活性を維持できることを示している。これら変異株を用いた実験により、セリン代謝の全貌を明らかにすることが可能かも知れない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、予定した表面糖鎖構造に関与する遺伝子の破壊株は全て作出し、その自己凝集性、ガラス表面への付着、バイオフィルム形成量等を調べることができた。今年度成績から論文1本を現在、投稿準備中である。加えて今年度はCampylobacterの増殖、付着、バイオフィルム形成に関わるセリンの重要性を明らかにすることができた。研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究からCampylobacterの増殖、付着、バイオフィルム形成に関わるセリンの重要性を明らかにすることができた。serA、serB、serC、sdaC変異株を用いた実験から興味深い成績が得られており、今後セリン代謝の全貌を明らかにすることが可能かも知れない。
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