研究課題
マダニには個体レベルで展開される宿主体表への付着・血液消化・飽血などの吸血行動を支える器官として、唾液腺や中腸が重要な役割を果たしている。本研究では、シベリアから豪州にかけて広く分布し、ヒト・動物の致死的病原体を伝播する国内最優占種マダニのフタトゲチマダニを用いて、唾液腺で産生される蛋白分解酵素とそのインヒビターに焦点をあて、これら生物活性分子(TBM)の機能解明を通して得られるマダニ特有の機能・構造に立脚した抗マダニ薬及びバベシア症ワクチンなど、マダニの寄生とバベシア症に対する制圧技術を開発する。最終年度は、in vitroの性状解明に成功している終末糖化産物受容体(RAGE)結合分子であるロンギスタチンのin vivo性状についてRAGEノックアウトマウス(RAGE KO)を用いて解析した。ロンギスタチンKdマダニ(dsロンギスタチン)の刺咬部位では、陰性対照であるマダニ(dsmalE、ロンギスタチンは正常に発現している)と比較して、寄生虫感染に特有の細胞集簇である好酸球及びマクロファージの浸潤が確認された。同時に、これらのマウス皮下におけるサイトカインを測定すると、dsma1EではI15, Tnfa, Cox2, 及びMcp5の発現、蛋白レベルの産生が低値であったのに対し、dsロンギスタチンではいずれの産生も有意に高値であった。次に、野生型(Wt)及びRAGE KO にdsma1E、またはdsロンギスタチンを吸血させたところ、Wt-dsロンギスタチンの組合せでは、Wt-dsma1Eと比べて皮下に顕著な好酸球浸潤が確認されたが、RAGE KO-dsロンギスタチンとRAGE KO-dsma1Eの場合、いずれも皮下細胞数に有意な差は認められなかった。以上の成績から内在性ロンギスタチンは、吸血部位においてRAGE介在性炎症反応を減弱しているものと考えられた。
本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。
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Journal of Clinical Investigation
巻: 124 ページ: 4429-4444
10.1172/JCI74917.