研究課題/領域番号 |
12F02307
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
小長谷 有紀 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 教授
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研究分担者 |
CAIJILAHU 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 外国人特別研究員
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キーワード | 中国内モンゴル / シャマニズム / 民間医療 / 文化人類学 |
研究概要 |
中国内モンゴル東部地域においてシャマニズムが復活しつつある。本研究の目的は、多民族的社会主義中国の宗教政策、医療衛生政策、民族政策を視野にいれながら、民間医療と絡んでいるシャマニズム的各種儀礼を対象に、オルタナティブ医療と制度的医療衛生との間に発生する多元的医療の諸問題を文化人類学的に捉えることである。この研究は、中国において近代と伝統、大宗教と小宗教、漢文化と民族文化が交差するカテゴリーの中で続発する文化対立の諸問題を解決しようとする諸政策の本質と軌跡を学問的に解明することが強く求められるなか、その分野に対する新しい知見を提供することである。 本年度は研究計画通りに以下のような作業をおこなった。 まず、中国内モンゴル自治区フルンボイル地域においてシャマニズムに関する口述史調査と儀礼参与調査をおこない、オルタナティブ医療論、エスニシティ論及びシャマニズム的治療に関する事例資料を収集した, 次に、モンゴル国におけるブリヤート・シャマニズム、ダルハド・シャマニズムに関する初めての現地調査をおこない、中国内モンゴルにおけるシャマニズムとの対比研究を実施した。最後に、医学史、医療人類学及びシャマニズムをあつかった国際学会に参加し、内モンゴルにおけるオルタナティブ医療及びシャマニズム的治療などについて得られた資料を取りまとめ学会発表をおこなった。 そして、以上の現地調査と学術交流で得られたデータを基に、①オルタナティブ医療とエスニシティ問題の関係性に注目しアイデンティティ・ポリティクスとシャマニズムとの関連性を考察した。②シャマニズム的民間治療が地域社会及び国家の医療衛生政策の実施との相互作用に注目し、学術論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、内モンゴルのシャマニズムに関する追加調査・モンゴル国のシャマニズムに関する現地調査をおこない、異なる地政学的でありながら同じ文化源に由来した両地域のシャマニズムを比較して考察することができた。 次に、国際的な学会発表を通じて本課題の研究意義と重要性に対する意見交換をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度において、主に現地調査と研究の情報蒐集に集中したが、今後は以下のような研究活動をおこなう。まず、モンゴル国で実施されたシャマニズムに関するフィールドワークのデータと内モンゴルのシャマニズムの諸相を相対化して考察をおこなう。次に、本研究の対象地域である内モンゴルのフルンボイル地域でおこなった追加調査のデータを分析し、今までまとめてきた資料調査の内容を確認する。最後に、日本国内の諸図書館において、シャマニズムとオルタナティブ医療に関する資料調査をおこなう。そして、海外の学会に参加し、シャマニズム及び伝統医療に関する国際的なレベルでの議論をおこなう。
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