研究課題
西南日本のプレート境界巨大地震震源域周縁部では、深部低周波微動の顕著な活動が既に明らかにされているが、日本列島の他の場所では、北海道で大地震の表面波によってトリガーされた活動以外には知られていない。そこで、まず日本列島全体における深部低周波微動活動ポテンシャルを明らかにするために、大地震の表面波によってトリガーされる微動の探索を目的として、日本国内のすべての観測点のデータを解析し深部低周波微動の有無を調査した。その結果、これまで知られている西南日本や北海道だけでなく、関東北西部、九州南西部、及び九州東方の日向灘でも深部低周波微動が発生していることが明らかになった。これらの深部低周波微動の存在は、その場所で定常的に深部低周波微動が発生している可能性を示すものであり、活断層の深部におけるゆっくりすべりを反映する可能性がある。以上の結果を2012年12月に米国サンフランシスコ市で開催された米国地球物理学連合において発表した。また、カナダのクイーンシャーロッテ諸島において、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震などの大地震の表面波によってトリガーされた深部低周波微動の存在を明らかにし、その研究論文は米国地球物理学連合の雑誌に掲載された。以上のトリガー微動だけでなく、西南日本に定常的に発生している深部低周波微動の発生位置等を高精度に把握するため、米国で開発された微動検知システム(WECC)を西南日本の微動データに適応するためのパラメータ調整、システム改良を行ない、微動のカタログ作成に着手した。また、世界の他地域で発生する深部低周波微動活動を解明するため、台湾におけるデータ解析を進め、付近で発生したマグニチュード6の地震の後に微動活動が活性化したことを明らかにした。台湾では、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの沈み込みの関係が南北で逆転するなどテクトニクスが複雑であり、沈み込むプレートの形状も明確ではないため、深部低周波微動の分布を精度良く推定することで、テクトニクスの解明に繋がる可能性があり、深部低周波微動の研究はその意味でも非常に重要である。
2: おおむね順調に進展している
既存の日本側システムによって作成されたカタログとの比較については着手していないものの、日本国内のプレート沈み込みに関連しない新たな深部低周波微動の発生を認識できたことは特筆すべき点である。また、2年目以降に予定していた台湾における深部低周波微動の解析が進んだため、研究計画全体としては、おおむね順調に進展していると判断できる。
西南日本の深部低周波微動活動の把握精度向上のため、引き続き新たな深部低周波微動検知システムの適用を進めるとともに、既存のカタログとの比較を行ない、システム改良に反映させる。日本で新たに検出された、プレート沈み込みとは関連しない深部低周波微動について、深部低周波微動源やその発生メカニズムに関する解析を進めるとともに、台湾における深部低周波微動活動の解析結果を取りまとめ、論文執筆を進める。
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GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS
巻: VOL. 40 ページ: 1-6
doi:10.1002/grl.50220
Bulletin of the Seismological Society of America
巻: Vol. 103, No. 1 ページ: 595-600
doi:10.1785/0120120253