研究概要 |
超原子価ハロゲン化合物に対して,市販されているトリフルオロメチル化源を加え,酸化的に反応系内で活性なトリフルオロメチル種(求電子型,あるいはラジカル型)を発生させるトリフルオロメチル化を試みた。ハロゲンの中でも活性の高い状態の臭素から合成する超原子価ブロマン化合物の合成に取りかかった。まず,ジフルオロブロマンに対して強力な求核的トリフルオロメチル化試薬として知られるトリメチルシリルトリフルオロメタン(Me_3SiCF_3)を作用させて,単離することなく芳香族化合物1,2-ジメトキシベンゼンとの反応を行ったが,複雑な混合物を与えるのみであった。そこで,比較的取り組みやすいヨウ素を用いて行うこととした。初めにMe_3SiCF_3,フルオロホルムやヨードトリフルオロメタンのように求核的なトリフルオロメチル化試薬を用いて反応を試みたが,目的の生成物は得られなかった。しかしながら喜ばしいことに,トリフルオロメチルスルフィン酸ナトリウム(NaSO_2CF_3)をトリフルオロメチル化試薬として,[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン(PIFA)存在下で行ったところ,反応が5分で終了し目的生成物を60%収率で与えた。次にNaSO_2CF_3とPIFAの量を最適化したところ,2.0当量のNaSO_2CF_3とPIFAを用いた時,最もよい収率が得られた。また,溶媒をトリフルオロエタノールやアセトニトリルに変えて反応を行ったが,収率がわずかに低下し,塩化メチレン中では39%の収率でしか得られなかった。最適化した条件で,基質一般性の検討を行った。様々な芳香族化合物との反応を調べた結果,一般的に中程度の収率で,目的物を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
用いる試薬や反応条件等,さらに精査を行い,比較的安定な超原子価ハロゲン型トリフルオロメチル化試薬の合成を目指す。系内で調製する手法に関しては他のトリフルオロメチル源であるCF31やルパート試薬等,様々な条件に対応し得る手法を確立し,次のステップである不斉トリフルオロメチル化に備える予定である。
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