研究課題/領域番号 |
12F02363
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
早川 泰弘 静岡大学, 電子工学研究所, 教授
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研究分担者 |
MANI Navaneethan 静岡大学, 電子工学研究所, 外国人特別研究員
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キーワード | 色素増感太陽電池 / 酸化亜鉛 / ナノ結晶 / 有機被膜剤 / ヘキサメチレンテトラアミン |
研究概要 |
本研究は、低価格、高効率な色素増感太陽電池を作製するために(1)化学溶液法と水熱合成法による酸化亜鉛ナノ粒子合成時に溶液に有機被膜剤を添加し、濃度、熱処理温度、熱処理時間がナノ結晶の形状、サイズ、構造、吸収光特性、発光特性、電子状態等に及ぼす効果を明らかにする、(2)酸化亜鉛ナノ結晶を用いて光半導体電極の階層構造を形成し、光電変換効率に及ぼす効果を調べる、(3)酸化亜鉛の高電子移動度と酸化チタンの色素耐性の長所を合わせもつナノ結晶形成条件を明らかにし、(4)色素増感太陽電池の光電変換効率の向上を図ることを目的としている。 0.1M酢酸亜鉛と0.2Mの水酸化ナトリウムをイオン水に溶解させた後、ヘキサメチレンテトラアミンを添加し、室温で8時間反応させた。その後、90℃で6時間熱処理した。ヘキサメチレンテトラアミン濃度を0.005、0.05、0.075Mと変えて、ZnOの構造や光学的特性に及ぼす効果を評価した。評価は粉末X線回折法、紫外-可視スペクトロスコピー測定、透過電子顕微鏡、フォトルミネッセンス測定により、行った。さらに、塗布法によりフッ化スズ基板上にZnOを塗布し、N-719色素を用いて色素増感太陽電池を作製し、電流-電圧測定(1.5AM,1000Wcm^<-2>太陽模擬光照射)で変換効率を測定した。その結果、合成したZnOは六方晶構造であり濃度が低い場合には平均長さが約20nmの三角形状のナノシートが形成された。濃度が高い場合には平均長さが約120nmのダンベル状の結晶が成長した。フォトルミネッセンスピーク強度は0.05Mの場合が一番高くなった。0.005、0.05Mではバンド端発光が強いが、0.075Mでは欠陥に起因した発光が強くなった。色素増感太陽電池の変換効率は、ヘキサメチレンテトラアミン濃度が0、0.005、0.05、0.075Mの時、それぞれ0.20%、2.20%、3.21%、2.80%であり、0.05Mの場合に無添加と比べ約15倍変換効率が高くなることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘキサメチレンテトラアミンを有機被膜剤として用いて酸化亜鉛ナノ結晶を合成し、粉末X線回折法、紫外-可視スペクトロスコピー測定、透過電子顕微鏡、フォトルミネッセンス測定により結晶性の評価を行った。さらにこれを光半導体電極として用いて色素増感太陽電池を作製した。酸化亜鉛と酸化チタンナノ結晶の合成に関する研究成果が4編採択されており、研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
問題点はない。今後、ピリディンなど他の有機被膜剤の効果を調べ、さらに酸化亜鉛の高電子移動度と酸化チタンの色素耐性の長所を合わせもつナノ結晶形成条件を明らかにし、色素増感太陽電池の光電変換効率の向上を図ることを目指す。
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