研究課題/領域番号 |
12F02373
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
遠藤 銀朗 東北学院大学, 工学部, 教授
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研究分担者 |
OYETIBO Ganiyu 東北学院大学, 工学部
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キーワード | 重金属汚染 / 重金属耐性微生物 / 水銀吸着除去酵母 / 細胞外高分子物質 / 水銀還元気化細菌 |
研究概要 |
本研究では、重金属耐性微生物を用いて、特に水銀耐性をもたらす分子遺伝学的特徴と水銀の生物学的除去機構を解明し、それによって得られる基礎情報を環境の水銀汚染の浄化に活用することを目的としている。研究代表者である遠藤と研究分担者である外国人特別研究員のOyetiboが共同して、遠藤と外国人特別研究員のOyetibo氏がこれまで行ってきた重金属耐性細菌の探索に関する研究を基礎として、水銀耐性細菌および水銀耐性酵母の分子遺伝学的特性と水銀除去の機構を解明する研究を実施した。また、環境保全のための十分な投資ができない途上国においては、できるだけ費用対効果に優れかつエネルギー消費を伴わない環境保全技術の開発と活用が求められていることから、水銀耐性微生物の応用に関する研究として、水銀汚染地域の新規バイオレメディエーション技術の開発を目指す研究を実施している。平成25年度の研究においては、ナイジェリアのラゴスラグーンの汚染の状態を重金属の濃度を分析することによって把握した。一方、単離できた44株の重金属耐性微生物のうち水銀耐性酵母2株について酵母細胞表層への水銀の吸着および細胞内への取り込みと金属水銀への還元とその後の気化を実験によって明らかにした。実験結果から、単離された水銀耐性酵母は高い水銀吸着能力を有しているだけではなく、水銀イオンを還元して気化することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水銀耐性細菌の水銀還元気化能力および水銀耐性酵母の水銀吸着除去能力と還元気化能について確認することができ、このような現象を水銀汚染環境のバイオレメディエーションに活用する方向性についても明らかにすることができたことから、研究は概ね順調に進展していると言える。ただし、水銀耐性細菌の耐性機構について、その遺伝子レベルでの解明に関する研究成果はまだ得るに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度および25年度における研究の成果に基づいて、平成26年度においては主として重金属汚染環境の浄化に適用するための環境技術の開発を行う。水銀イオンおよび有機水銀を含む鉱・工業廃水中に含まれる水銀を物理的技術や化学的技術に比べて低コストで除去する技術として、水銀耐性で水銀化合物を金属水銀に変換可能な微生物を用いた固定化生物バイオリアクター方式の生物による水銀除去技術を開発する。これによって、世界、特に新興国や発展途上国においてこれから深刻な環境問題になると考えられる水銀汚染による健康影響(水俣病で代表される)を防止するためのバイオプロセスを確立し、将来アフリカ諸国等における環境保全技術として活用できるようにすることを目指す。水銀変換微生物を用いた固定化生物バイオリアクター方式の生物による水銀除去技術を開発するために必要な研究設備は、全て遠藤の研究室に現有されており、新たに整備する設備は必要とされない。研究予算の多くは、研究用薬品等の消耗品の購入、および国内外における研究情報の収集と研究成果発表のための旅費として計上している。
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