研究課題/領域番号 |
12F02381
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
辻 伸泰 京都大学, 工学研究科, 教授
|
研究分担者 |
TIAN Yanzhong 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
|
キーワード | ナノ結晶 / 再結晶 / 加工 / 強度 / 延性 / 転位 / 塑性不安定 / 加工硬化 |
研究概要 |
本研究の目的は、組成を変化させることによって積層欠陥エネルギーを系統的に変化させたFCC合金を用い、ARBおよび}PTプロセスなどの巨大ひずみ加工や通常加工に伴うナノ組織の形成過程と、その機械的性質に及ぼす積層欠陥エネルギーの影響を系統的に明らかにすることである。機械的性質の解析においては、強度だけでなく延性・靱性に特に注目し、強度と延性を両立させたバルクナノメタルの創製を目指す。これまで、中国・金属材料研究所における研究により、ナノ双晶組織を有する純銅が、高い強度と延性を併せ持つことが報告されている。また、鉄鋼材料の分野では、変形時に変形双晶が現れることによって高い延性を示すFCC鋼(TWIP鋼)が注目を受けている。こうした観点から、特に非常に低い積層欠陥エネルギーを有し、双晶が現れやすい合金系においては、極めて微細なナノ結晶組織や、優れた力学特性の発現が期待される。積層欠陥エネルギーを系統的に変化させてバルクナノメタルの組織形成と力学特性を丹念に調べた研究例はなく、本研究の成果は、バルクナノメタル研究領域において注目を受ける結果をもたらすことが期待される。 研究代表者の研究室において、積層欠陥エネルギーの低いFe-Mn系合金では、巨大ひずみ加工を必要とせずに、通常加工とその後の焼鈍によって、平均結晶粒径400nnの完全再結晶ナノ組織が得られるという画期的な結果を最近得た。この成果に基づき、初年度に当たる平成24年度(10月来日のため実施期間半年)あ、やはり積層欠陥エネルギーが低いことで知られるCu-Al固溶体FCC合金を用いて研究を開始した。種々のAl量のCu-Al合金に対して最大圧下率90%までの通常冷間圧延と種々の条件での焼鈍処理を行い、その過程における組織形成を調べた。その結果、Cu-6.8wt%Al合金の場合、通常圧延と焼鈍によって、平均粒径400nmの完全再結晶ナノ組織が得られることを見いだした。またそうして得られたナノ結晶Cu-Al合金が、高い強度と大きな延性を併せ持つことも新たに見いだした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
来日後半年間の研究期間にもかかわらず、Cu-Al合金に対して系統的な実験研究を行い、学術雑誌論文3編程度に相当する成果を出している。その内容も、通常圧延と焼鈍によって平均粒径400nmの完全再結晶Cu-Al合金を得ることに成功するなど、画期的な内容である。得られた成果から、既に論文1本をまとめ、現時点で投稿直前である。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた興味深い成果をもとに、何故巨大ひずみ加工を必要とせずに完全再結晶ナノ組織が得られるのか、その機構を基礎的に明らかにする。また、得られたナノ結晶合金の変形機構を、精緻な引張試験中の局所ひずみ解析や、変形組織の電子顕微鏡観察などにより明らかにし、ナノ結晶合金が優れた機械的性質を示す原理を解明する。
|