研究実績の概要 |
本研究では、光触媒に焦点をしぼり、局在表面プラズモン共鳴(localized surface plasmon resonance: LSPR)効果による飛躍的な触媒活性向上を目指している。LSPRは、金属ナノ粒子の表面自由電子の集団振動が、特定の波長の光と共鳴し、さらに電子の振動によって分極が起こり、粒子表面近傍に著しく増強された電場が発生する現象である。一般的には、Au, Agなどの金属ナノ粒子、ナノロッドで観測される現象であるが、近年の研究により一部の高濃度にドープされた半導体酸化物においても観測されることが知られている。光応答と触媒活性特性を兼ね備えたプラズモニックナノ材料の設計は、可視光駆動型光触媒のために非常に重要である。 このような背景の下、具体的に以下の研究を実施してきた。 (1)非金属系モリブデン酸化物プラズモニックナノ材料(MoO3-x)の合成と光触媒特性評価 表面保護剤や界面活性剤の添加なしに非金属系モリブデン酸化物ナノシート(MoO3-x)を合成し、この材料が680 nm付近にLSPRに由来する強力な可視光吸収を示すことを見出した。 (2)MoO3-x上に金属ナノ粒子を固定化することによる、プラズモン増強型光触媒の創製 モリブデン酸化物ナノシートの有する強いプラズモン吸収とPdナノ粒子の高い触媒能を組み合わせたハイブリッド型光触媒(Pd/MoO3-x)において、酸化・還元操作によってモリブデン酸化物ナノシートのキャリア濃度を変更することによりプラズモン吸収を可逆的に調製可能であることが明らかとなった。
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