研究課題/領域番号 |
12F02388
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中辻 憲夫 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授
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研究分担者 |
WANG Lin 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 外国人特別研究員
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キーワード | 人工多能性幹(iPS)細胞 / 金ナノロッド(GNR) / 分化制御 / 3次元培養 |
研究概要 |
我々はこのプロジェクトで、成長因子で修飾した金ナノロッド(GNR)を含む3次元球状コアシェル構造ハイドロゲルを用いた人工多能性幹(iPS)細胞培養プラットフォームの開発を目指している。このシステムは、まずハイドロゲルビーズにiPS細胞、GNRを均一に分散し、その後、ハイドロビーズの中心(コア)に胚体(EB)のin-situ生成を行い、コアシェル構造を構築する。その後、ハイドロビーズの望みの場所に局所的に光を照射することにより、GNRが光スイッチとして働き、EB内細胞の一部にのみ成長因子の放出を可能にする。このような手法で、時空間的制御によるin-vivoを模倣したEBの分化誘導を実現する。このシステムは、より効果的、効率的、バイオミメティックなiPS細胞分化のためのプラットフォームになることが期待される。その結果、再生医療の研究コミュニティに利益をもたらし、また、発生生物学者にとって胚発生をより良く理解するための貴重なツールとなる可能性がある。 2012年度は2つの研究を平行して行った。1)単分散で近赤外線照射に反応する金ナノロッド(GNR)の合成。2)iPS細胞をカプセル化するためのハイドロゲルマトリックスの開発。これは培養の際にハイドロゲルビーズの中心でのEBのin situ形成を可能にする。 具体的には、1)として、近赤外領域で強い吸光を伴う単分散のGNRの合成に成功した。これらのGNRは成長因子放出制御の担体として利用する予定である。2)については、iPS細胞をカプセル化するために様々なハイドロゲル材料を検討し、さらにそれらがiPS細胞の成長をサポートし且つEBをin situ形成する能力があるかどうかを評価した。EBが水の粘度に近いハイドロゲルビーズの内部に形成される傾向があること、さらにこのようなハイドロゲルビーズが安定に存在するためには保護殻の添加が必要であることがわかった。保護殻はポリ-L-リシン(PLL)やポリエチレンイミン(PEI)など高分子電解質の浸漬コーティングで生成できる。本研究ではPLLおよびPEIによって安定化された0.5~1%のアルギン酸ヒドロゲルによって、mTeSR1媒体中の培養においてハイドロゲルビーズの中心でiPS細胞が成長し、EBが形成されることを見出した。このハイドロゲルシステムを用いて成長因子で修飾したGNRの取り込みに関する研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は2012年度末までに、提案されたプロジェクトに必要な2つの材料の開発に成功している。すなわち、1)近赤外光照射に反応する金ナノロッドと、2)ハイドロゲルビーズの中心(コア)における胚体(EB)のinsitu形成を可能にする、3次元球状コアシェル構造を持つ人工多能性幹(ips)細胞培養プラットフォームである。
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今後の研究の推進方策 |
残り1年半で以下の目的を達成する予定である。1)合成された金ナノロッドを成長因子で機能化し、近赤外線照射によるその放出を確認する。2)成長因子修飾金ナノロッドを3次元球状ハイドロゲルベースのips細胞培養ビーズに組み込む。3)光活性化によるハイドロゲルビーズの中心にある胚体(EB)への成長因子輸送を検証する。4)ハイドロゲルビーズ内の成長因子の異方的暴露に伴うEBの形態および表現型の変化を明らかにする。
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