研究概要 |
ゼブラフィッシュの心臓形成のごく初期の段階に一過性に発現するコネキシン分子Cx36.7が正常な心臓形成に必要であり, カルシウムシグナリングの中継分子である可能性を見出していることから, コネキシンとカルシウムシグナリング系の連携という新しい情報伝達の概念が存在することを予想している。この情報伝達のしくみと意義を分子レベルで明らかにする為, 平成24年度ではゼブラフィッシュCx36.7遺伝子の発現調節機構について解析を行い心臓特異的な転写因子Gata4が重要であることを明らかにしている。さらに平成25年度では, Cx36.7の伝えるシグナル分子の特定とその作用機構について解析を行った。 まず, Cx36.7の機能不全により心臓形成に異常をきたす変異体ゼブラフィッシュftkを, さまざまな環境水中で飼育したところ, カルシウムイオンの存在下でftkの表現型が回復することを見出した。同様の回復は, Cx36.7をアンチセンス法で発現抑制した場合にも認められたことから, Cx36.7が心筋分化初期の段階でカルシウムイオンを選択的に通すヘミチャネルを形成していることが示唆された。さらに, 心筋分化に重要な転写因子の発現もカルシウムイオンに特異的に応答して上昇することを示す結果も得た。以上の結果は, Cx36.7がカルシウム流入を促して心筋細胞分化のトリガーとなるという研究当初の我々の予想を支持するものといえる。また, マイクロアレイによる網羅的解析から, カルシウム依存的または応答性のある分子の発現量がftkで変動していることを見出しており, Cx36.7がカルシウムイオンのメディエーターであることが強く示唆された。
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