研究課題/領域番号 |
12F02396
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
日下部 宜宏 九州大学, 農学研究院, 教授
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研究分担者 |
LI Zhiqing 九州大学, 農学研究院, 外国人特別研究員
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キーワード | カイコ / 分散型動原体 / クロマチン / エピジェテクス / ヒストン修飾 |
研究概要 |
昨年の研究で、ヘテロクロマチン制御因子であるポリコーム複合体が、カイコ分散型動原体染色体の修復に大きな役割を担っていること、その役割がヒストンユビキチン化酵素を介していることが示唆された。そこで本年度は、カイコヒストンバリアントのユビキチン化修飾がクロマチンに及ぼす影響を解した。その結果、カイコH2AXはDNA損傷に応答して脱ユビキチン化されるが、ポリコーム複合体遺伝子の欠損下ではDNA損傷がなくても脱ユビキチン化状態にあること、また、脱ユビキチン化状態のクロマチンは弛緩している可能性が示唆された。一方、カイコH2AZについては、DNA損傷に応答したユビキチン化制御は観察されていない。同時に、ユビキチン化類似の修飾として知られるSUMO化についても解析を行った。カイコSUMO化に関わる6遺伝子、BmSmt3、BmUba2、BmAos1、BmUbc9、BmPias、BmUlp1を全て単離し、解析したところこれらの遺伝子は細胞周期特異的な転写制御を受けており、M期染色体上で特徴的な局在を示すことを明らかにした。即ち、間期においては各と中心体に局在しているが。M期中期の染色体ではDNAから解離し、後期染色体において再結合すること、また、spindle midbodyにも局在していることが示された。さらに、RNAi法を用いたSUMO化経路欠損細胞の解析により、SUMO化経路欠損は細胞周期のM期停止、紡錘糸形成不全を引き起こすことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分散型動原体という特異な構造を持つカイコ染色体について、アセチル化、ユビキチン化、SUMO化修飾の海洋を明らかにすることができた。特にSUMO化修飾については、細胞分裂制御に深く関わっており、同じ昆虫であっても局在型動原体を持つショウジョウバエとは異なるSUMO化修飾制御をうけている可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
研究を遂行する上での問題点は特にない。 今後は、SUMO化修飾の標的タンパク質の同定を中心に、細胞分裂制御におけるSUMO化修飾の役割を詳細に研究する。また、SUMO化修飾経路の遺伝子間相互作用、標的タンパク質の認識機構についても研究を進める。
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