研究課題/領域番号 |
12F02399
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
園元 謙二 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授
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研究分担者 |
MAHIN A.A. 九州大学, 大学院・農学研究院, 外国人特別研究員
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キーワード | 抗菌ペプチド / ランチビオティック / nukacin ISK-1 / 作用機作 / 殺菌作用 / 静菌作用 / 膜電位の崩壊 / ATP漏出 |
研究概要 |
ランチビオティックが一般の抗生物質と異なり選択的な抗菌活性を示す要因は何に依存するのか検証する必要がある。なぜならランチビオティックの構造に基づく作用機作の分子機構解明は、新規で優れた諸性質を兼ね備えたランチビオティックの合成にとって必要不可欠であるからである。我々はランチビオティックnukacin ISK-1がBacillus subtilisやStaphylococcus aureusに対して静菌的に作用することを報告している。ところが、最近、nukacin ISK-1がMicrococcus luteusやStaphylococcus simulansに対しては殺菌的に作用し、菌株により作用機作が異なるというこれまでの概念を超えた結果を得た。本研究では、nukacin ISK-1が菌株により殺菌作用または静菌作用を示す要因を多面的に解析した。 殺菌的に作用することで知られているランチビオティックnisin Aをコントロールとして用いた。nukacin ISK-1を最小生育阻止濃度の5倍量添加すると、M.luteusやS.simulansは菌体濃度や生菌数が大きく低下したが、その程度はnisin Aに比べて若干劣っていた。また、これらの菌株の膜電位の崩壊の程度はnukacin ISK-1とnisin Aで同程度であった(約40-50%)。また、透過型電子顕微鏡を用いた細菌の形態観察から、nukacin ISK-1の添加によってM.luteusは細胞死に至っていることがわかったが、死菌体の数はnisinAに比べて少なかった。さらに、nukacin ISK-1が検定菌からのATP漏出や検定菌の細胞膜を用いて調製したリボソームからの低分子蛍光物質の漏出を引き起こさなかったことから、nukacin ISK-1が検定菌の細胞膜に孔を形成する可能性は低いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書の作成段階で、予想される問題点を明確にしていたことと、数値目標を定め多方面からの検討を柔軟に行ったことが順調に進展する結果となった。また、研究代表者と分担者が互いの専門領域で柔軟に対処したことも大きな要因と言える。
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今後の研究の推進方策 |
我々はこれまでに等温滴定型熱量計を用いてnukacin ISK-1と標的分子である細胞壁前駆体lipid IIとの結合を定量的に解析している(Islamら、J.Am.Chem.Soc.,134:3687-3690,2012)。しかし、lipid IIとnukacin ISK-1のどの部分が結合に関与するのか、分子情報は不明である。核磁気共鳴(NMR)を用いてnukacin ISK-1-lipid II複合体の構造を分子レベルで解析する。
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