研究概要 |
1. 菌株特異的作用機作の解明 昨年度の研究成果から、ランチビオティックnukacin ISK-1は菌株により作用機作(静菌あるいは殺菌的)が異なるというこれまでの概念を超えた結果を得た。今年度は、殺菌作用をさらに詳細に解析した。 nukacin ISK-1が検定菌からのATP漏出や検定菌の細胞膜を用いて調製したリポソームからの低分子蛍光物質の漏出を引き起こさなかったが、カリウムイオンのような低分子の溶出が確認され、nukacin ISK-1が小さなサイズの孔あるいはカリウムイオンに特異的な孔を形成することが示された。 2. Nukacin ISK-1-lipid II複合体の構造解析 我々は他のランチビオティックであるmersacidin、lacticin3147のLtn A1、plantaricin Cに見られるようなlipid IIに結合する保存モチーフ(TxS/TxD/EC)をnukacin ISK-1のリングA領域にも見出した。また、これまでに等温滴定型熱量計を用いてnukacin ISK-1と標的分子である細胞壁前駆体lipid IIとの結合を認めた。しかし、lipid IIとnukacin ISK-1のどの部分が結合に関与するのか、nukacin ISK-1のどの領域が関与するのか、結合することで構造変化がみられるのか、など分子情報は不明であったので、核磁気共鳴(NMR)を用いてnukacin ISK-1-lipid II複合体の構造を分子レベルで解析することを試みた。大腸菌でのランチビオティック生産系を用いて、^15N,^13Cラベル化nukacin ISK-1を調製した。また、lipid IIの水溶性アナログを合成して、nukacin ISK-1との相互作用や複合体の高次構造を解析している。
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