本研究課題では、サハラ以南アフリカ諸国における食料安全保障および栄養摂取と所得の関係決定要因の解明を試み、同地域の食料安全保障の向上および貧困問題の解決に貢献しようとするものである。研究目的を達成するための計量経済分析を行うために、まず、国別マクロデータを用いて食料安全保障指標の決定要因の計量経済学的解明のためのデータベースおよびモデルの構築をおこなった。その後、これらのデータおよびモデルを用いた統計的解析を行った。具体的には、国際機関等提供のデータの購入、関連学会参加および関係機関インタビュー等により分析に用いるデータ収集・整理を体系的に行った。また、計量経済学的データ解析に用いる統計解析ソフトウエア等の試験適用を行い、さらに構築したデータセットを用いて計量経済学的解析を行った。 その結果に基づいて、第1に、食料安全保障の基礎となる作物生産の規定要因を解明するため、米およびトウモロコシ等の作物を対象として、生産量や収量の短期的および長期的な市場価格に対する統計的反応を統計的に解明した。また、第2に食料安全保障指標としてカロリーやタンパク質の摂取量を用いた場合について、一人当たり所得等の経済変数と食料安全保障指標の因果関係を統計的に解明した。さらに、第3にカロリーやタンパク質等の一人当たり摂取量といった食料安全保障指標と経済成長との関係を統計的に明らかにした。このように、本研究課題は、概ね当初の研究目的を達成したと言える。これらの成果としての5編の学会論文を執筆し、このうち2編が学会誌等に掲載された。他の1本は掲載見通しであり、他の2編は審査中である。
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