研究実績の概要 |
本研究はニワトリ卵管の宿主防衛機能の強化を目指して、卵管の自然免疫機能の解明と、ハーブのニゲラ成分によりこの機能を賦活できる可能性を追究したものである。 ニゲラハーブの主要な成分であるメラニンが卵管の炎症性サイトカインや抗菌ペプチドの発現に及ぼす影響を解析した。メラニン刺激は子宮部IL1BやIL6,ケモカインのCXCLi2の発現を誘導し、子宮部と膣部のインターフェロンγ(IFNγ)発現を低下させた。また、メラニンは抗菌ペプチドのAvBD4や6をインキュベート時間1.5時間で上昇させ、3時間では低下させる傾向を示した。さらに、メラニンは抗菌ペプチドのCathelicidin (Cath)発現を子宮部では誘導し、膣部では減少させる傾向を示した。 次に、LPSで誘導されるサイトカインやAvBD発現に及ぼすメラニンの影響を解析したところ、子宮部と膣部でLPS誘導性のIL1B発現には影響しなかったが、LPS誘導性のIL6発現を子宮部では増強させて膣部では抑制し、一方、LPS誘導性のAvBD4とAvBD10発現を膣部では抑制した。また、メラニンはLPS誘導性のCath1発現を子宮部では増強し、膣部では抑制した。膣部のCath3発現はLPSの影響を受けなかったが、メラニンはこれを抑制した。これらのことから、メラニンは子宮部炎症性サイトカインのIL1BやIL6発現を誘導する一方で、IFNγ発現を低下させる作用があることが明らかとなり、また、LPS誘導性のIL6、AvBD、IFNγの発現に影響するが、この作用は卵管の部位によって増強または抑制的に働いて異なるものと思われた。 以上、本研究の成果は、ニゲラハーブが卵管の抗菌ペプチドやサイトカインの産生を制御することで、感染防御機能を高めたり、炎症制御による卵形成機能障害を抑制したりするために有効である可能性を示唆するものである。
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