研究課題
本研究では、癌組織内の微小環境を細胞性免疫の活性化に有利なものに改変し、それが樹状細胞(DC)による癌免疫治療の治療効果に与える影響について検討することを目的とする。この微小環境改変ための方法として、細胞性免疫を活性化するサイトカイン遺伝子を癌細胞内へ導入して癌細胞から分泌させることを計画し、今年度においては、以下の研究を行った。①マウスの皮下に移植した癌細胞組織内への遺伝子導入 : 蛍光タンパク(GFP)の遺伝子を昨年度検討した最適構成の人工ベクターに内包し、C3H/Heマウスの皮下に移植したML8腫瘍の腫瘍内(IT)あるいは静脈内(IV)に注射し、GFPを発現する細胞をフローサイトメトリーあるいは蛍光顕微鏡観察によって解析したところ、IT注射をした場合では10~20%の腫瘍細胞に発現が認められた。IV注射では、GFP発現腫瘍細胞は1%以下であった。IT注射およびIV注射ともに骨髄細胞および腸管上皮細胞におけるGFPの発現は認められなかった。②細胞性免疫を活性化するサイトカインの遺伝子作製 : マウスとイヌのインターフェロン-γ遺伝子およびイヌのCD40リガンド遺伝子をクローニングして、それぞれの遺伝子の発現プラスミドを作製した。作製した発現プラスミドをin vitroでマウスあるいはイヌの腫瘍細胞株に導入してサイトカインの産生を確認した。③樹状細胞の特異的活性化による抗腫瘍免疫の増強 : 最近開発されたDCに高親和性のトル様レセプターリガンド(TLR-L)であるh11cを用いてDCを活性化し、それをマウス移植癌およびイヌ自然発症腫瘍の腫瘍組織内に注入して免疫治療を行い、腫瘍の退縮あるいは有意な増殖抑制を認めた。
2: おおむね順調に進展している
昨年度計画した①マウスの皮下に移植した癌細胞組織内への遺伝子導入、②細胞性免疫を活性化するサイトカインの遺伝子作製および③樹状細胞の特異的活性化による抗腫瘍免疫の増強についてほぼ計画通りに達成できた。
①宿主マウスに増殖させた腫瘍細胞中にマウスインターフェロン(IFN)γなどのサイトカインの遺伝子を導入してサイトカインを腫瘍微小環境中に産生させ、そこにDCを注入して腫瘍に対する治療効果をみる。②DC高親和性のTLR-Lによる活性化に加え、DCの抗原提示能を強化する工夫を行い、腫瘍治療効果のさらなる向上を検討する。
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