研究概要 |
1,3-ポリオール類は、医薬分子やポリケチド生物活性天然物に幅広く存在するキラルビルディングブロックであり、本プロジェクトは触媒開発を基盤としてこの新規合成法を確立することを目標とする。単純なアルコール分子を出発点として、水酸基に対して3位に位置するsp3 C-H 結合を酸化してC-O 結合に変換できれば、この触媒的C-H 酸化反応を繰り返すことで1,3-ポリオールが迅速に合成できるものと考えた。本研究が達成されれば、理想的かつ究極的な1,3-ポリオール合成法になりうる。実用的な触媒的不斉1,3-ポリオール合成法の開発により、医薬機能最適化のための合成法基盤の確立をおこない、分子供給の立場から医薬創出を促進する。 本年度は、アルコールより酸化状態の高いキノリルアミドを配向基として用いて、カルボニルのβ位sp2炭素をケイ素化する反応を開発した。酢酸パラジウム触媒を10 mol %用いて、炭酸銀と硫酸セシウムを共存させることでジシランをシリル化剤としたsp2C-Hケイ素化反応が基質一般性高く進行した。酢酸パラジウムによりConcerted Metallation Deprotonation、ジシランとのメタセシスによるシリルパラジウムの形成、還元的脱離による炭素―ケイ素結合の形成、炭酸銀による生じるO価パラジウムの酸化を経る活性な2価パラジウムの再生、の一連の工程により反応が進行しているものと想定された。本反応はグラムスケールでの実施が可能であり、また配向基の除去も可能であった。さらにジゲルマンをジシランの代わりに用いることで、世界初のC-Hゲルミル化反応への応用も可能であった。また、予備的ではあるが、反応系にDMFを添加剤として加えることで、非常に困難なsp3C-Hのシリル化にも成功した。 本知見を活かして、来年度は玉尾酸化により水酸基に変換可能なシリル化剤を用いたC-hケイ素化反応を検討して行く予定である。
|