研究概要 |
1. NASHモデルの検証 : NASH発症におけるミトコンドリアダイナミクスの役割を明らかにした。①組織学的検討 : 炎症性マーカー(F4/80, MCP-1)発現亢進、肝細胞のアポトーシス(TUNEL)さらにネクローシス(核の膨化)の増加、肝繊維化(Picrosirius Red Stain)の増加を確認。電顕でミトコンドリアの形態異常(膨化)に加え、小胞体の膨化、断裂といった形態異常を明らかにした。②遺伝子発現解析 : マイクロアレイ法により遺伝子発現を解析した。脂質合成・分解に関与する遺伝子群の発現量に著変は認めなかったが、小胞体ストレスマーカーであるP3, ATF4が50-100倍増加を認めた。③野生型およびDrpLiKOマウス肝臓よりミトコンドリアを単離し、呼吸活性、ミトコンドリア膜電位を測定したが、有意差は認めなかった。また細胞内ATP濃度にも有意差は認めなかった。Drp1の欠損によりミトコンドリア形態および動態に変化を認めるが、呼吸活性には全く影響がみられないことを明らかにした。 2. 肝ミトコンドリアダイナミクスを標的とした創薬研究 : siRNA, dnDrp1による肝臓でのDrp1のノックダウン、機能阻害を行った。Drp1に対する2種類のsiRNAを合成し、RSMENDに搭載し、野生型マウスの尾静脈より投与。1,3,7日後の肝臓におけるDrp1の発現をwestern blot法を用いて確認した。コントロールとしてScramble RNAをMENDに搭載したものを用いた。Drp1siRNA投与群で、3日目でDrp1の発現が40%に低下、7日目には発現が回復していた。次に投与後3日目で耐糖能を評価したところ、Drp1ノックダウン群で耐糖能の改善をみとめ、筋肉でのインスリン感受性の亢進を確認した。
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