「アーカイブ」という用語は重要な知の領域を示すだけでなく、映像メディアにおいても収集・排除・保存・展示・使用可能にするなどの様々な具体的な実践を指している。近年「記憶として映像」をテーマにする研究が増えている中で、アーカイブ理論・実践を含めることができたら、映像と知識の関係に関してさらに具体的・歴史的理解を深めることができるだろう。最近の研究では、長編劇映画に限らず、PR映画・ニュース映画・教育映画・民族団体の映画・ホームムービーなどを含めた「隠された映像」に大きな関心が寄せられ、「映画」という用語が指す意味も大幅に拡充されているといえる。こうした広がりの中で、ポストコロニアルの視点に基づく映像実践は最も有益な分野の一つである。本研究は、広く映像文化を歴史的に理解するために、次の3つの連結された視点を再考することを目的とする。(1)私的な映像アーカイブと映像保存サークル、(2)そのアーカイブを利用した、ニュース・PR・ホームムービーなどの映像を取り入れて編集したドキュメンタリー(3)日本映画における民族観をテーマにする回顧展の映画祭。本研究が目指すのは、ポストコロニアル・アーカイブとして日本の映像を調査することであり、このような試みは「映像メディアに対して新しい知の体系をどのように構築できるか」という問に対する答えを模索することになるだろう。
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