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2013 年度 実績報告書

野生霊長類(ニホンザル)の行動持性の進化

研究課題

研究課題/領域番号 12F02705
研究機関京都大学

研究代表者

村山 美穂  京都大学, 野生動物研究センター, 教授

研究分担者 ARNAUD Coline  京都大学, 野生動物研究センター, 外国人特別研究員
キーワードニホンザル / 遺伝子 / 行動 / 血縁
研究概要

動物の性格(行動特性)の、多様性維持と進化の機構の解明は、近年の行動生態学の重要なテーマの一つである(Dingemanse & Reale 2005 ; van Oers & Sinn 2011)。非ヒト霊長類においては、性格の表出の多様性、さらには遺伝的背景の研究が行われてきた(Adams 2011)が、進化的視点での研究はなかった。性格の評定方法としては、主に飼育個体において、観察者への質問紙による評定が行われていた(Weisse et al, 2009)。鳥類や哺乳類の各種で行われているような行動テストを野生霊長類にも応用すれば、新たな視点で性格評定を行うことが期待できる(Reale et al. 2007)。本研究では、長期にわたる観察により母系の血縁が判明している野生ニホンザル集団を対象として、性格の進化過程の解明を目指した。具体的には、家系と行動の情報にもとついて、性格の遺伝様式、選抜淘汰の有無、性別や性格要素同士の関連、性格の可変性および可変性の進化などを、Quantitative geneticsの手法を用いて解析した。
性格評定のために2種類の行動テストを行った。新奇物体(プラスチックのおもちゃ)と新奇食物(ウズラのゆで卵)を提示し、反応をビデオカメラで記録した。2013年の5,6月に151回のテストを実施した。前年度とあわせて348回のテストにより、前個体の78%が新奇物体、53%が新奇食物について、少なくとも1回のテストを受けた。新奇食物への接近が遅い個体は接近後に食物を調べたり味をみる時間が短かった。また同じ個体では、新奇物体への接近および扱いについて、食物と同様の傾向を示した。性、年齢、季節(繁殖季と非繁殖季)による影響は見られなかった。順位の高い個体は中・低順位と比較して、新奇物体への興味が弱い傾向にあった。
99個体について、マイク白サテライト16マーカーの遺伝子型判定を行い、全組み合わせの血縁度を推建した。血縁が近い個体は、新奇食物への反応がよく似ていた。また25項目の質問紙による性格評定を、5名の観察者により、79個体について行い、優位性、不安性、親密性、知性の4主成分を抽出した。血縁と行動の関連性を解析し、予備的な研究成果を、海外および国内の学会で発表し、論文を執筆した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

血縁、行動テスト、性格評定の相互の関わりについて興味深い成果が得られ、学会発表と論文執筆を行い、新たに候補遺伝子の型判定も視野に入れた計画を立案できた。

今後の研究の推進方策

少なくとも2報の論文を作成予定である。一つ目は、野生霊長類としては初めて、新奇性追求に関る行の個の遺伝的背景を解析した論文で、近々投稿する。二つ目は質問紙による性格評定と行動や血縁との関連について、解析を進め、投稿する。さらに、これまでの解析で血縁(ゲノム類似性)と行動の関連が見られたことにもとづき、オキシトシン受容体など社会関係に関与する候補遺伝子の型判定を行い、行動や性格との関連についても解析を進める予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 その他

すべて 学会発表 (5件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] Evolution of personality traits in wild primates, the Japanese macaques2013

    • 著者名/発表者名
      Arnaud CM, mzumura T, Adams MJ, Weiss A. Inoue-Muravama M
    • 学会等名
      Annual meeting of the Society for Experimental Biology
    • 発表場所
      Valencia, Spain
    • 年月日
      20130704-06
  • [学会発表] ニシローランドゴリラの性格評定と関連遺伝子の探索.2013

    • 著者名/発表者名
      村山美穂, WeissA, 井上英治, 藤田志歩, 安藤智恵子, 坪川桂子, 岩田有史, Chimene N, 山極壽一
    • 学会等名
      日本霊長類学会・日本哺乳類学会合同大会
    • 発表場所
      岡山理科大学(岡山市)
    • 年月日
      2013-09-06
  • [学会発表] Inheritance and evolution of personality traits in the semi-wild Japanese macapues.2013

    • 著者名/発表者名
      Arnaud C, 鈴村崇文, Adams MJ, Weiss A, 井上-村山美穂
    • 学会等名
      日本霊長類学会・日本哺乳類学会合同大会
    • 発表場所
      岡山理科大学(岡山市)
    • 年月日
      2013-09-06
  • [学会発表] 神経伝達物質関連遺伝子の多型性がチンパンジーの性格および行動に及ぼす影響.2013

    • 著者名/発表者名
      戸田克樹、藤田志歩, Alexander Weiss, 川村誠輝, 玉井勘次, 小村圭, 野元武, 福守朗, 山本裕己, 松永雅之, 伊藤二三夫, 伊藤英之, 橋川央, 井上英治, 村山美穂
    • 学会等名
      第19回日本野生動物医学会
    • 発表場所
      京都大学(京都市)
    • 年月日
      2013-08-30
  • [学会発表] 次世代シーケンサーによる野生生物研究の新展開.2013

    • 著者名/発表者名
      村山美穂
    • 学会等名
      野生動物研究センター共同利用研究会「次世代シーケンサーの有効活用」
    • 発表場所
      京都大学(京都市)
    • 年月日
      2013-05-20
  • [図書] 動物の性格を遺伝子から知る. 『WAKUWAKUときめきサイエンスシリーズ4海は百面相』2013

    • 著者名/発表者名
      村山美穂
    • 総ページ数
      247
    • 出版者
      京都通信社
  • [備考]

    • URL

      http://miho-murayama.sakura.ne.jp/

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公開日: 2015-07-15  

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