研究課題/領域番号 |
12F02711
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
佐藤 三久 独立行政法人理化学研究所, プログラミング環境研究チーム, チームリーダー
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研究分担者 |
PERARNAU Swann 独立行政法人理化学研究所, プログラミング環境研究チーム, 外国人特別研究員
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キーワード | キャッシュ最適化 / データ局所性解析 / 高性能計算技術 / 京コンピュータ / work stealing / 分散スケジューリング |
研究概要 |
本研究の目的は、大規模な並列システムでの性能解析並びに最適化技術である。本研究では、自動的な性能最適化技術や並列実行時システムの研究を行う。その結果を、京コンピュータや最新のメニーコアシステムに適用し、その有効性について検証する。本年度においては、自動的な最適化技術として、京コンピュータに用いられているプロセッサのキャッシュ最適化を行った。このプロセッサでは、チップ内のレベル2キャッシュを2つの独立した領域のキャッシュに分けることができる「セクターキャッシュ」という機能がある。この機能を使うことにより、特定のアクセスパターンを持つデータやアクセスの局所性の高いデータを、別のキャッシュ領域に割り当てることにより、キャッシュを効率的に利用し、最適化することができる。本研究では、バイナリー解析ツールであるDWARFを用いて、データごとのアクセスのトレースデータを取得し、そのデータごとの再利用距離(Reuse Distance)を計算する。その再利用距離から、セクターキャッシュの設定と個々のデータのおくべきセクタを決定するアルゴリズムを提案した。その結果、NASParallel Benchmarkでの結果ではキャッシュミス率は大きく低減し、実行時間では、CGが10%、MGでは20%の実行時間を短縮することができた。このデータアクセストレースとキャッシュの設定の結果に基づいて、コード変換を行うことにより、この一連の最適化プロセスを自動化することができる。今後、これを行うためのフレームワークを開発していく。さらに、今年度においては、来年度に向けて、フランスINRIA.のチームとともに、PGAS(Partitioned Global Address Space)モデル上でのワークステーリングによる動的タスクスケジューリングについて、検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、研究開始から予定していた、キャッシュ最適化技術については当初目的としていた成果を得ることができた。また、来年度に向けて、PGASモデルの動的スケジューリングなどの調査・検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度においては、PGASモデルでの分散タスクの動的スケジューリングについて研究を進める。PGAS言語としては、現在、理研・筑波大で開発を進めている並列言語XcalableMPをベースとして、これを拡張する形で進める。大規模プラットフォームとしては、京コンピュータ上で評価実験を行う。また、海外の研究協力先として、関連研究を行っている、フランスINRIAグルノーブルのチームと協力しながら、進めていく予定である。
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