研究課題/領域番号 |
12F02714
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山中 弘 筑波大学, 人文社会系, 教授
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研究分担者 |
D.KAWASHIMA Tinka 筑波大学, 人文社会系, 外国人特別研究員
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キーワード | 聖地 / ツーリズム / 宗教社会学 / 観光人類学 / 世界遺産 / 長崎 / 民衆宗教性 / 消費 |
研究概要 |
本研究の目的は、現代における聖地または巡礼地における消費と信仰との相互関係を通じて民衆宗教性の特徴を明らかにすることである。このため研究の焦点を3つに絞ったが、本年度は「現代日本における民衆宗教性にもとづく行為の事例を収集する」ことを目標とした。これによって、近年関心を高める民衆宗教性の特性を明らかにするための資料が蓄積され、次年度以降における宗教社会学的・観光人類学的研究につながると考えた。 当該年度は、日本における聖地の様相を把握するために、いくつかの聖地で調査を行った。特に、長崎のカトリック教会群の調査と、長崎大司教区が推進している五島列島における教会巡りの現状を明らかにするために、長崎市中心部、外海地区、および平戸市において教会関係者、巡礼センター、観光協会など観光関連機関に聞き取り調査を行った。また、カクレキリシタンの集落である平戸市根獅子町を訪れて、住民の聞き取り調査も行った。ここでは、根獅子集落でおこなわれる殉教祭、長崎の教会群の観光資源化などについての認識・意見を聞くことができた。聞き取り調査に際しては、地元の関係者の調査に対する同意を十分にとった上で行うことに留意し、研究代表者と分担者および研究協力者が一緒に調査を実施した。 この実地調査により、長崎の教会群をめぐり、県・観光業界・地元住民といったいくつかの機関・集団が持つ様々な思惑が浮き彫りとなり、今後の研究にとり貴重な資料となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実地調査をおこなうことができ、また調査対象地において今後の研究のための協力関係を築くことができ、次年度以降も継続して調査が可能である。このデータを分析するために、文献資料、方法論の構築も同時に進めてきたので、当初の計画に沿って順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
学会などでの成果発表を積極的に行う予定である。国内では少なくとも、6月に行われる「宗教と社会」学会、9月の日本宗教学会、11月の哲学・思想学会に参加する。また、海外へ日本での成果を発信するために、学会への参加を予定している。国内外の学術雑誌への投稿も随時行うこととする。本年度も国内での調査を継続しておこない、対象地は長崎のキリスト教遺産のほか、固有の信仰を持つ沖縄での調査を予定している。どちらも日本では少数派の信仰であるが、観光の面で人気が高まっており、これが聖地の形成にどのように影響するか考察したいと考えている。また、日本の民衆宗教性がアジアの中で一般的に見られるものかどうか調べるために、中国などの事例も参考にする予定である。これについてはおそらく1ヶ所となるだろうが、適切な場所を選定しできれば現地調査を行いたい。
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