研究実績の概要 |
固有ひずみ(固有変形)に注目し、溶接で生じる変形や残留応力の理論予測について非線形過渡解析である熱弾塑性FEMおよび固有変形に基づく弾性FEMを用いて研究を実施した。研究は大きく次の3段階に分けられる。すなわち、(1) 解析理論の理解と習熟、(2) 熱弾塑性FEMを用いた計算により試験片サイズなどが固有変形に及ぼす影響の解明、(3) 実構造物を構成する多層溶接継の固有変形データベースを熱弾塑性FEM解析により構築である。 溶接継手を対象に脆性破壊試験や疲労強度試験が小型の溶接継手試験片を用いられるが、試験片内に発生する残留応力(あるいはその生成源である固有ひずみ)に対する試験片サイズの影響については余り検討されていないので、上記(2)に対応する研究としてこれを明らかにし溶接学会の全国大会で講演した。(MURAKAWA Hidekazu, YUAN Hua, BLANDON Juan and GADALLAH Ramy、“溶接継手の残留応力および固有変形に及ぼす試験片寸法の影響”、溶接学会全国大会講演概要、第95集 (2014)、384-385.) また、(3)については、トンネル掘削機の溶接を対象に、構造全体の溶接組立変形を予測する際に必要となる固有変形の同定を熱弾塑性FEM解析により行った。具体的には6パスから20パスの多層溶接により製作される3種類の突合せ継手およびT型継手を対象に、多層溶接の各パスで生じる固有変形のデータベースを構築した。今後は、この固有変形を用いることにより大型溶接構造物であるトンネル掘削機全体の溶接組立変形の予測が固有変形に基づく弾性FEM解析により簡単に予測可能となり、合理的な溶接変形制御が実現できる。
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