研究課題
オマキザルの群れ内で、オス同士の血縁度はメス同士の血縁度より平均値が低く、逆にミトコンドリアDNAのハプロタイプ多様度が高かった。これはオス偏重分散とメス定住性と整合している。対照的に、クモザルでは平均血縁度もミトコンドリアDNAのハプロタイプ多様度もオスメス間で差が見られなかった。これはこのクモザル集団ではオスもメスも分散するためと考えられる。クモザルはオマキザルより高いミトコンドリアDNAのハプロタイプ多様度を示しており、これはクモザルのメス分散性とオマキザルのメス定住性を反映したパターンといえる。したがって、性による遺伝的多様性の違いと種による遺伝的多様性の違いは共に観察される分散パターンと整合的といえる。オスは単独で分散する場合もあれば並行して(すなわち、他のオスと一緒に)分散する場合もある。並行分散をするオス同士は他のオスとの間より血縁度が高かった。その結果、並行移入してきたオスは、出自群に留まっているメスと同等数の同性血縁者を持つことがわかった。対照的に、単独移入オスは、集団中に大多数のオスが血縁者を持っていても、群れレベルでは複雄群の中でオスの血縁者を持つことは稀であった。4つの馴化群のうち3つで、オス同士の協力関係(連合)の安定性は血縁度ではなく親近度(すなわち一緒に移入してきたかどうか)に影響を受けていた。これらの発見は、分散する性における協力性の進化に関する新しい知見を与えるものである。2位以下のオスが父親である場合の21ケースのうち13ケースにおいて、コドモの母親はその群れのアルファオスの娘であった。つまり、アルファオスはめったに自分の娘との間にコドモを残すことはないことがわかった。この近親婚回避は霊長類が少なくとも父-娘レベルでは血縁を認識することができることを示しており、現在論争となっている認識能力に関するトピックスに貢献した。
本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない
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Animal Behaviour
巻: 96 ページ: 41,899
10.1016/j.anbehav.2014.07.016
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