研究実績の概要 |
認知訓練(ワーキングメモリ(WM)訓練)と有酸素運動の二重課題訓練がそれぞれ片方より、認知機能、脳形態などにより大きな影響を及ぼす、有酸素運動との同時訓練によりWM訓練効果が促進されるとするとの仮説の検証を行い、WM訓練と有酸素運動の二重課題訓練の認知機能、脳形態へ及ぼす影響を明らかにすることが本研究の目的である。 93名の健康な高齢者(65-75歳)がこの研究を完遂した。これらの被験者はまず、認知テスト、質問紙、MRI撮像などに参加し、その後12週間の訓練期間に入った。その後再び認知テスト、質問紙、MRI撮像などに参加した。12週間の間、被験者は週3回,1回約1時間ほど、訓練に参加した。被験者は3群にWM訓練群、有酸素運動群、両方の同時訓練群(WM訓練+有酸素運動群)わけられた。 結果は、遅延記憶、非言語性推論の検査はWM訓練を含む2群>有酸素のみ、有酸素+WM>WMという傾向はなしというWM訓練がこれらの機能に効果があることを示唆する結果パタンであった。前頭葉機能検査では、WM訓練を含む2群>有酸素のみ訓練群、有酸素+WM訓練>WM訓練という仮説によく合致する結果が得られた。脳画像の異方性に関しては有酸素運動+WM訓練の群において他の2群に比べ上縦束Iと呼ばれる白質繊維の異方性が有意に上昇していた。脳画像の平均拡散脳に関しては、前頭前野,前部帯状回の各所、海馬、黒質など脳幹周辺の水の拡散性が有酸素運動+WM訓練の群において他の2群より減少していた。 このように、WM訓練+有酸素運動の二重訓練は、前頭葉機能や、関連する領域の神経構造に変化を及ぼした。また、WM訓練や有酸素運動の認知機能への効果も確認された。
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