研究概要 |
JSPSフェローシップは2012年10月に開始され,この7カ月は主にプロジェクトの共同パートナーと今後の実験計画について協議を重ねた.特にプロジェクトの共同研究者(フィリピン,アメリカ合衆国,および英国)とは同年11月のミーティング(IRRI,フィリピン)において,亜鉛鉱物の生成および温室における栽培試験計画について話し合いの機会を得た.同ミーティング期間中にはさらに,IRRI近郊およびBoho1の低亜鉛圃場の視察に同行し,亜鉛欠乏の現状についての知見を深めた.加えて,実験圃場においては亜鉛欠乏土壌での根の生育について,耐性および感受性の213系統のイネの根数計測を行い,系統間の差異について検討を行った. JIRCASにおいては温室にて既に鉄プラークを形成させる為の予備試験を行い,低亜鉛耐性の異なるイネ品種を用いて,鉄{Fe(III)]プラークの形成と亜鉛の吸収に関する栽培試験を開始し,現在進行中である. また,米国とオーストラリアの共同研究者の協力を得て,米国のスタンフォードシンクロトロン放射光施設での分析実験を予定しているが,現在のところ,利用期間について交渉および申請作業を進めている.当実験の目的は,土壌および鉄プラーク中の鉄および亜鉛鉱物の同定である. 亜鉛欠乏土壌の特性および亜鉛耐性植物種に利用可能な亜鉛のプールを特定し,これらのプールが亜鉛吸収メカニズムの違いによって異なるのかどうかを検証するための,化学分析を行う予定であるが,この実験にあたってはフィリピンからの土壌輸入が遅延しているため,計画に遅れがでている.土壌試料が到着次第,分析を開始する予定である. これらの実験および分析(栽培試験,土壌分析,土壌および生成鉱物中における亜鉛の吸/脱着,)は9~12カ月の期間で結論を出し,またこれらの試験結果より3件の出版物および国際会議での発表を計画している.
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今後の研究の推進方策 |
バルク土壌,根圏および鉄[Fe(III)]プラーク中の不溶性形態の亜鉛を定量し,化学的抽出法,X線回折(XRD),シンクロトロン放射光を用いたX線技術(synchrotron based x-ray techniques)を用いて,これらの亜鉛鉱物を特定する.バルク土壌,根圏および鉄[Fe(III)]鉱物構造中の鉄鉱物について定量を行い、学的抽出法,X線回折(XRD),シンクロトロン放射光を用いたX線技術(synchrotron based x-ray techniques)を用いた分析を行う.耐性の異なるイネ品種間で,鉄鉱物および根圏中の亜鉛鉱物の違い(が存在した場合)を定量するため,栽培試験を行う.不溶性亜鉛鉱物を合成し,異なるイネ品種の根滲出液が溶解度を増加できるかどうかを試験する.
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