研究概要 |
本研究では, 深海の底生生物を含んだ堆積物を対象に水温などの環境を精密に制御し、条件を変えた飼育実験を実施し, 群集構造解析, 生活様式観察および代謝活性や殻の形態学的解析など、深海生物生態系とその活動に与える影響を評価することを目的としている. 実験は、昨年度に引き続き、pH条件を変化させた室内培養実験を行った。培養は昨年度同様に干潟堆積物(浅海)を行った。さらに、本研究のために、相模湾初島沖水深1000mから深海堆積物を採取し、同様の実験を行った。実験では底生生物を含む堆積物を水温, 塩分, pHをコントロールして培養した。実験中はこれらの環境因子に加えアルカリ度のモニタリングを実施した。実験期間終了後は堆積物中のpH、溶存酸素(DO)プロファイルを測定した上で、堆積物を表層から深度方向に1cm間隔で切り分けた。切り分けた堆積物はローズベンガルアルコールで固定した後、篩上で水洗し、乾燥した上、顕微鏡下で底生有孔虫試料を拾いだした。同様の実験を相模湾水深1000mから得られた深海堆積物についてもおこない、群集を拾いだした。いずれの実験区からも多くの有孔虫試料が得られており、今後の解析に供される予定である。 以上の結果について専門研究者と議論するため、日本古生物学会、日本地球惑星科学連合およびNorth American Paleontological Conventionにて発表を行った。また、南フロリダ大学セミナーに招待され"Applications of Foraminifera : Sea-level fluctuations and palaeoclimates from the New Caledonia Basin and identifying extreme events from the SW Pacific"の演題で発表した。また、愛知県立春日井高等学校においてJSPSサイエンスダイアログ講師を担当するなど、国際交流並びにアウトリーチにも尽力した。
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