本研究では、超音波を利用する水浄化技術を開発するために超音波照射実験の最適条件の探索を行っている。昨年度の研究では、定在波型超音波照射システムを用いて有害有機化学物質であるメチルオレンジを分解する実験において、照射実験に用いるガラス製照射容器の直径を変化させるとメチルオレンジの分解速度が変化することがわかった。さらに容器に加える溶液量を変化させた場合(溶液高さを変えた場合)においても分解速度が変化することがわかった。本年度は、各種形状(円筒型、ピラミッド型、円錐型、ダブルコーン型)を有するガラス製流通式照射容器を製作し、容器形状とメチルオレンジの分解速度の関係について検討した。その結果、メチルオレンジの分解速度は円筒型>ダブルコーン型>ピラミッド型>円錐型の順で遅くなることがわかり、円筒型を用いたときに最も効率よくメチルオレンジが分解されることが分かった。流速が10 mL min^<-1>から30 mL min^<-1>へと速くなるにつれて、いずれの容器においても分解速度が遅くなる傾向が観察された。各種形状を有する流通式照射容器の特徴を解析するために、水溶液の容器内での滞留時間(NaClを用いる電気伝導度変化の解析)や水溶液が吸収した超音波エネルギー量(熱量変化の解析)の測定を行った。その結果、分解速度は、滞留時間、超音波エネルギー量、溶液体積の影響や容器内での超音波の反射の影響などが複合的に分解速度に影響していることが示唆された。さらに流通式照射容器の試料溶液の導入の仕方(試料溶液の入口と出口の位置を変える操作)の影響についても検討したが、円筒型容器では導入の仕方を変えても分解速度はほとんど変わらないことが確認された。
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