研究課題
本研究は、フィリピンの都市災害ガバナンスにおいて、インセンティブ及び制約を与える制度的、政治的要因の複雑化した相互作用を考慮したガバナンス分析を行うことを目的とし、政治連携及び制度改革と管轄間交渉を含む学術的な政治を分析する。本年度の研究で明らかになった主要な課題は以下の通りである。1. フィリピンの都市ガバナンスは縦横にまたがる政治と官僚制の分裂による問題に直面し続けている。2. 既存の都市制度と地方議会との協調は政治的権限を欠いており、政府間の政治力学と財政調整の難航によって容易に弱体化させられる。3. 縦割り行政が一般化しており、中央政府による縦割り分裂、政策の重複、責任に対する透明性の欠如が起きている。4. 中央政府が掌握する予算源に偏りがある。5. 地方分権化の枠組みにおける制約 : 縦割り政治、自治領主義、横の繋がりの崩壊による地方自治への圧迫。地域間の協力が政治同盟や地方官僚の友好関係に依存してしまう。6. 都市災害ガバナンスの制度改革の道は限られており、既存の制度によるプログラムを強化するか、他の大都市圏の制度などを取り入れ、一時的な都市協力体制を作ったり、域内の都議会を含めた災害に対応するプロジェクトベースの地域間協力を行うことである。本年度の研究では、都立政府を制度的構造上設立できないフィリピンの都制改革の葛藤に焦点を合わせた。地方政府の条約を見直すことは必須であり、行政区を引き継ぐのでなければ、フィリピンが政治的権限を有する強化された都市構造から利益を得ることができる方法について再考する必要がある。つまり、災害管理の制度改革は災害対策の枠を超えて考えていく必要がある。改革の実現には、開発と災害政策を上手く統合し規制構造を組み込んだ広域ガバナンスの枠組みを再考する総体的なアプローチが必要である。
2: おおむね順調に進展している
本年度の目標は二つの査読付学術誌に論文を発表することであり、当初の研究目的を達成することができた。更に政策文書も作成することができた。現在出版待ちの論文が二つあり、新しい論文執筆にも着手しており、国際会議での発表後に出版が予定されている。また、平成25年度はフィリピンで二度目の現地調査を行うこともできた。
平成26年度は二つの論文出版に伴う改訂を行い、会議での発表と学術誌に出版するための二つの新しい論文のドラフトを作成する予定である。論文は既に二つの国際会議で受理されており、一つは6月にトルコ・イスタンブールで開催予定の「国連システム学術評議会」(ACUNS)年次会議において「Building Resilient Cities : Rethinking the Cross-Border Dimensions of Metropolitan Disaster Risk Governance」と題した発表と、7月にカナダ・ケベックで開催予定の世界政治学会の第23回国際会議における「The Politics of Collaboration in Philippine Metropolitan Disaster Governance」と題した発表を予定している。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Land Use Policy
巻: (印刷中)(掲載確定)
Environment, Development and Sustainability : A Mutlidisciplinary Apptoach to the Theory and Practice of Sustainable Development
巻: 15 ページ: 1-17
10.1007/s10668-013-9507-4