研究課題/領域番号 |
12F02779
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邊 克巳 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授
|
研究分担者 |
MEILLINGER Tobias 東京大学, 先端科学技術研究センター, 外国人特別研究員
|
キーワード | 空間統合 / 眼球運動 / 参照枠 / 地図 / 空間知覚 |
研究概要 |
本研究の目的は、人間の空間知覚における参照枠(レファレンスフレーム)の利用と統合に関して、実験心理学的・認知科学的手法を用いて検討することである。物体の位置あるいは位置関係を表現するには、複数の参照枠が利用可能であるが、それらがどのように統合されているのかはまだ明らかではない。 本年度の研究では、地図と実空間との空間統合過程を調べるため、空間統合課題中の眼球運動測定を行う実験環境を構築し、5つの実験を行った。実験の結果、1)これまでの空間統合研究における仮定と異なり、地図と実空間での空間情報の遷移が大きな心的負荷を与えていること、2)空間情報が統合される参照枠が環境(地図か実空間か)によって異なる事が明らかにされた。十分な時間を与えられた場合には、事後に提示された情報が、事前に提示された参照枠に加算的な影響を与えるが、提示時間が不十分であった場合にはこれは観察されなかった。その他、現在見えている空間情報と記憶内にある空間情報とが競合すること、眼球運動実験では網膜座標や環境中心座標を用いず、呈示された情報を非効率な形で統合しようと試みていることが示唆された。現在は、これらの成果を踏まえ、翌年度の研究に向けて日本ならびにドイツの共同研究者との打ち合わせを行い、参照枠を地図からの情報読み取りという観点からではなく、実行動との結びつき(ナビゲーション)という観点から捉え直し、地図読み取りの際の構えの影響を調べる事を計画している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に5つの実験を行い、着実に結果を得ている。来日が9月であり、成果発表の機会にはほとんど恵まれなかったが、翌年度Vision Sciences Society等での発表を予定しているほか、既に論文投稿の準備も行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の研究によって得られた成果-現在知覚されている空間情報と記憶上の空間情報の相互作用過程、ならびに地図読み取りにおける構えの効果-をさらに検討したいと考えている。特に、複数の異なる情報を、1つにまとめているのか、あるいは単に重ね合わせているだけなのかという問題は、ヒトの空間統合におけるもっとも根本的な問いの一つであり、本研究がこれを明らかにすることで、ヒトの空間情報統合過程のさらなる理解が得られると考えている。
|