研究課題
B細胞は抗原刺激やT細胞との相互作用により活性化され、胚中心での抗体遺伝子の体細胞超変異やクラススイッチを経て、最終的に抗体産生細胞や記憶B細胞へと分化する。この終末分化の異常が、免疫不全、自己免疫疾患およびBリンパ腫の原因となりうる。本研究では、遺伝子改変マウスを用いて、2010001M09Rik(201Rik)というB細胞に特異的に発現する機能未知の遺伝子のB細胞の分化、活性化および抗体産生に果たす役割を解明する。本年度は201RikノックアウトマウスにおけるB細胞の分化と成熟について解析を行い、以下の結果が得られた。1)骨髄中のプロB、プレB、未熟Bおよび成熟B細胞の各B細胞亜集団の割合をFACSで解析したところ、野生型と201Rikノックアウトマウスでは明らかな違いは見られなかった。2)同様に脾臓中の辺縁B、濾胞BなどのB細胞亜集団の割合に変化が見られなかった。3)血中の抗体価をEHSA法で測定したところ、201Rikノックアウトマウスにおいては、WTマウスに比べ、IgAとIgMの濃度が有意に低下していたことが判明した。4)201RikノックアウトB細胞のin vitroにおける各刺激(抗IgM抗体、CD40リガンド、IL-4など)に対する増殖応答は正常であった。5)脾臓B細胞をCD40リガンド+IL-4およびLPS+IL-4で刺激したところ、WTと201RikノックアウトB細胞は同様にIgG1へのクラス変換が誘導された。以上の結果より、201RikはB細胞の分化、成熟および増殖においては必要ではないが、血中IgMとIgAの濃度が低下することから、B細胞の抗体産生に関わる可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
これまでのところ、計画していた実験は全て順調に進み、かつ当初の計画になかった免疫応答の実験もすでに開始している。
これまではin vitroでの実験を中心に行ってきたが、次年度よりin vivoの実験を進めたい。取り分け、T依存性および非依存性抗原に対する抗体産生について解析する予定である。また、血中のIgMとIgAの抗体価の低下の原因について、in vitroでの抗体産生細胞の分化誘導系を用いて解析を進めたい。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
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