研究課題/領域番号 |
12F02794
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
狩野 方伸 東京大学, 大学院医学系研究科, 教授
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研究分担者 |
KATO Ako 東京大学, 大学院医学系研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 内因性カンナビノイド / 興奮性ニューロン / 抑制性ニューロン / 逆行性シナプス伝達 / 分界条床核 / 2-アラキドノイルグリセロール / 脳スライス / マウス |
研究概要 |
抑制性介在ニューロン特異的にGFPを発現するマウスであるGAD69-GFP knock-in mouseの分界条床核のスライスにおいて、抑制性ニューロンをGFPの蛍光によって可視化して、興奮性ニューロンと区別して、パッチクランプ記録を行った。ニューロンの脱分極によって、一過性のIPSCの抑圧(DSIと略す)が観察された。いずれのタイプのニューロンにおいても、CB-1受容体のアンタゴニストのAM251 (5μM)によってDSIは消失した。また、代表的な内因性カンナビノイドである2-arachido noylglycerol (2-AG)の合成酵素diacylglycerol lipase (DGL)の阻害剤THL (10μM)によっても、DSIは消失した。さらに、脳における主要な2-AG合成酵素であるDGLαのノックアウトマウスとGAD67-GFP knockin mouseを交配して、抑制性ニューロンと興奮性ニューロンを区別して調べたところ、いずれのタイプのニューロンにおいても、DSIは欠如していた。 次に、細胞に通電をした際の電流応答の内向き整流性を指標にして、投射ニューロンと介在ニューロンと思われるものを区別して記録し、抑制性シナプスの繰り返し刺激(1OHz, 10min)を与えた。抑制性ニューロン、興奮性ニューロンのいずれにおいても、繰り返し刺激により、投射ニューロンと考えられるものに長期抑圧(iLTD)が生じた。また、CB-1ノックアウトマウス及び体DGLαノックアウトマウスではiLTDが起こらなかった。 これらの結果は、分界条床核の抑制性ニューロンと興奮性ニューロンのDSI及びiLTDは、シナプス後部ニューロンから放出された2-AGが抑制性シナプス前部に存在するCB_1受容体に作用して生ずることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた平成25年度の研究内容を、予定よりも3カ月程度早く、平成25年12月までにほぼ終了した。そこで、本来平成26年度の計画であった、神経因性疼痛のマウスモデルの作製に着手し、このマウスの分界条床核の急性スライスの電気生理学的解析データが得られつつある。これまで、自発的に発生する抑制性性シナプス後電流(IPSC)には有意な変化はみられなかったが、興奮性シナプス後電流(EPSC)の頻度が、対照マウスに比べて約2倍に増大することを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
野生型マウス及びDGLαノックアウトマウスにおいて、7~8週齢で坐骨神経を慢性的に絞窄することによって神経性疼痛モデルを作製する。これらのマウスから分界条床核の急性スライスを作製して、電気生理学的解析を行う。自発的に発生するEPSCの頻度の増大がDGLαノックアウトマウスにおいてみられるかを確認する。また、野生型マウスから作製した神経因性疼痛モデルマウスにおいて、2-AGを介する興奮性シナプスの一過性抑圧やLTDに変化がみられるかを調べる。
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