研究概要 |
B中間子のセミタウオニック崩壊、B->D(^*)tau nu、の分岐比の標準模型とのずれが、Belle実験(KEK、日本)およびBABAR実験(SLAC,米国)で報告されている。現在ほとんどの素粒子実験の結果が標準模型の予言と一致している状況で、この実験事実は標準模型を越える新しい物理への手がかりとして大変重要である。そこで、A. TayduganovはD. Becirevic, S. Fajfer, I. Nisanzicと共同でより一般のB中間子のセミレプトニック崩壊、B->D(^*) 1 nuに対する新しい物理の効果を調べた。まず、これまでに確立している弱い相互作用の理論を鑑みて、レプトンの荷電カレントが左巻きであるという仮定を置いた上で、b->c 1 nuに寄与する高次元演算子の一般的な組から成る有効ラグランジアンを構成した。この有効ラグランジアンに基づき、B->D(^*) 1 nuの崩壊分岐比、崩壊分布について詳細な計算を行った。その際、ハドロンの形状因子としてMelikhovとStechにより提案されている構成クォーク描像に基づくものを採用し、パラメータに幅を持たせることで理論の不定性を評価した。その結果として、上述の実験の分岐比を説明し得る演算子を特定し、それらが崩壊分布に与える影響を明らかにした。この研究の関する論文を現在準備中である。また、A. Tayduganovは田中実、渡邉遼太郎、坂木泰仁と共同でB=>D(^*) tau nuにおける様々な新しい物理のテストについて研究を進めている。現時点までに、可能なレプトクォーク模型すべてについての解析をほぼ終えている。
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